10日は世界最大の映画の祭典アカデミー賞の授賞式がある。ブラジルでは「オスカー」の愛称が定着しており、ポルトガル語の呼称も「プレミオ・オスカー(オスカー賞)」なので、ここでもオスカーと呼んで話を進める。
ブラジル映画界にとって今年は、2つの大きな歴史的な節目となっている。
一つ目は、国を代表する大女優フェルナンダ・モンテネグロが「セントラル・ステーション」で主演女優賞にノミネートされてちょうど25周年の年であること。
フェルナンダは、見知らぬ少年と彼の父親を探しに出るリオの女性役を演じた。この映画は前年1998年にベルリン映画祭で作品賞と主演女優賞を受賞する栄誉を手にした。フェルナンダはこのほかにも幾つかの有名映画賞を受賞した。
オスカーでも、通常は米国の作品からのノミネートが当たり前の中、ポルトガル語映画ながらもノミネートされ、作品も外国語映画賞にノミネートされた。
この時、決定的な有力候補がおらず、フェルナンダの受賞が有力視されたが、オスカーは「恋に落ちたシェイクスピア」の主演女優グウィネス・パルトロウに渡った。
外国語映画賞も、スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督の今日まで有名な代表作「オール・アバウト・マイ・マザー」に敗れた。
この時にフェルナンダが受賞を逃したことに不満を抱くブラジル人は多い。それは作品賞も受賞することになった「恋に落ちたシェイクスピア」が当時、映画界で絶大な権力を持っていたプロデューサー、ハーヴィー・ワインスティーン氏が宣伝した映画で、実際に受けていた評判以上に映画賞で過大評価との呼び声が高かったためだ。
そのワインスティーン氏はかの「Me Too運動」で女性映画関係者への相次ぐ強姦やセクハラ疑惑で現在、獄中の身となっている。
二つ目が、2004年のリオのファヴェーラを描いた「シダーデ・デ・デウス(英語シティ・オブ・ゴッド)」のノミネートから20周年の節目だ。
1970年代に、子供でさえピストルを握り、抗争や麻薬密売に加わる壮絶な社会を描き、世界中にショックを与えたこの映画はブラジル映画ながら、フェルナンド・メイレレスが監督賞にノミネートされたのを始め、脚色賞、撮影賞、編集賞の4部門と、非英語作品としては異例のノミネートとなった。
この時、同作は国際的大ヒット映画「ロード・オブ・ザ・リング」に敗れたが、不思議がられたのは、大本命と目されていた外国語映画賞のノミネートを逃したことだ。関係者の後日談によると、当時、この部門の審査員が高齢者ばかりで、暴力的な内容の同作を嫌ったためだったとか。事実だとしたら呆れてしまうが。(陽)