【既報関連】10日にポルトガル議会選挙が行われ、極右シェガ党(Chega「もうたくさん」の意)から出馬した元ホームレスのブラジル人が国会議員に当選した。同国では移民の政治参加に関心が高まる中、極右政党から選出された下院議員の数が前回の4倍となるなどの新展開が示されたと11日付テラ・サイトなど(1)(2)が報じている。
9日付コレイオ・ブラジリエンセ(3)によると、ブラジルには24万人のポルトガル国籍を持つブラジル人(二重国籍者)が在住しており、彼らは被選挙権と投票権を持っている。さらに2010年から2023年の間に40万人以上のブラジル人移民が現地でポルトガル国籍を取得した。この票の行方はポルトガルの政治動向を左右する可能性がある。
今回ポルト地域から国会議員に選出されたマルクス・ヴィニシウス・テイシェイラ・ソアレス・ドス・サントス氏は、リオ州ゴヴェルナドール島で生まれ、総合格闘技(MMA)選手として18歳で祖国を離れた。当初、柔術のパンアメリカン競技大会に参加するために米国フロリダ州に渡ったが、大会終了後に帰国せずそのまま8年間滞在し、路上生活を送り、最終的にハイチ人家族の養子になったという異例の経歴を持つ。
その後マルクス氏は米国で結婚し、一子もうけたが離婚して一時帰国した。08年にポルトガルでMMAイベントに招待されたことをきっかけに、ポルトガルで格闘家としてのキャリアを積んだ。
2016年に再びブラジルに戻り、当時の大統領ジルマ・ルセフの弾劾を支持する抗議行動に参加したことをきっかけに政治に興味を持つ。同氏は18年の大統領選でボルソナロ氏を支持し、ポルトガルに戻ってからは同国の政界に入ることを意識し始めた。
マルクス氏は保守的な政治的思想を持ち、移民への厳格な管理を支持し、社会主義に反対する立場を取り、人種差別反対のデモ参加者を「被害者意識を持つ人々」と呼ぶ。
右派政党は一般的に移民排斥を掲げるため、ポルトガル在住ブラジル人移民からは嫌われる反面、ジウマPT政権時のブラジル経済混乱で追い出されるように欧州に移った世代には、反左翼が多いことから右派政党に共感を覚え、ボルソナロ親派も多いと言われる。
同国最多外国人集団のブラジル人にとって、これ以上新来外国人が増えるのは歓迎するものではなく、「ここから先は厳格化」という右派政党の主張に賛同しているようだ。
マルクス氏の当選はブラジル右派の間で大きな反響を呼んでいる。ボルソナロ前大統領の息子エドゥアルド下議は「おめでとう、マルクス。歴史を作っていますね。今後も良い仕事をしてポルトガルを盛り上げて」とSNSに投稿し、新政治家誕生を称賛した。
シェガ党は2019年の設立以来急速に台頭し、議会での議席を増やす。党は、ポルトガル社会民主党内の意見の相違から生まれ、右派政治家やイデオロギーに影響を受けて政治的立場は、伝統的な家族価値や移民政策厳格化を支持し、フェミニズムやジェンダーイデオロギーに反対する。
2019年選挙で同党は1議席しか獲得できなかったが、22年には12議席、今回は48議席に拡大した。下院で3番目に大きな政党に急成長し、中道右派のAD連合が選挙で勝利したことから与党になる可能性が出ている。(4)