デング熱対策で抜群の効果=小さな町ほど有効な蚊取り機

効果を上げている蚊取り器(サンタローザ・ド・ビテルボ市フェイスブックより)
効果を上げている蚊取り器(サンタローザ・ド・ビテルボ市フェイスブックより)

 ブラジルでデング熱患者が爆発的に増加している一方で、サンパウロ州内陸部サンタローザ・ド・ビテルボ市が導入した蚊取り器(mosquitrap)が抜群の効果をあげていると12日付BBCニュース(1)が報じている。同市の今年のデング熱感染者はわずか12人で、死者もなく比較的平穏にやり過ごしている。
 同市人口は2万6700人強で、今年は5340人に1人しか感染していない。市は、デング熱を媒介するヒトスジシマカを捕獲する蚊取り器を市内各所に設置することで、病気の蔓延を抑えることができたと指摘している。
 この蚊取り器は、蚊が卵を産む場所を模したもので、蚊を誘引する臭いを放つ化学物質を入れた水が入れられている。この物質は無臭で、人間には無害だ。蚊が侵入すると内部の粘着カードに捕まる。保健所が週に1度回収し、DNA分析をする。これにより蚊の種類やウイルスの株、生息地域や活動パターンを把握し、感染予測が可能になるという。
 蚊が媒介するジカウイルスやチクングニアウイルスに感染しているかどうかも分析される。蚊がウイルスを保有していることが確認されると、近隣住民に通知され、蚊が捕まった場所から半径200メートルの範囲で清掃・散布キャンペーンが実施される。分析結果はネットで公開され全住民がアクセスでき、市当局は感染の早期警告を受け効果的な対策を講じることができる。
 2022年には399件だったのが、装置採用後の23年には148件と63%も減少した。
 同市では昨年デング熱対策のために9万9千レアルを投資し、市内中に蚊取り器を設置した。さらに、接着剤や化学物質の交換回収された蚊の分析などの装置の定期的なメンテナンスには毎月7500レアルが必要だという。保健相によるとこれらの費用はデング熱患者の治療費よりも安く、かつ患者数も減少しているという。
 この蚊取り器は20年前にミナス・ジェライス連邦大学の研究者によって開発され、ブラジル全土で広く使用されている。同装置は卵を捕獲するのではなく、蚊そのものを捕獲して監視することに焦点を当てており、特定の地域の蚊の生息数を推定することが可能だという。
 この取り組みは監視が容易で、装置の設置が少なくてすむ人口3万人以下の小さな町でより効果的であることが示されている。
 一方、大都市では同装置の使用は分析機関の費用だけでなく、収集に関連する追加ユニットや保健員が多数必要となり経費がかさむ。そのため、大都市では蚊取り器の効果が低下する傾向がある。
 とはいえ、大都市の一例として170万人のパラナ州クリチバ市では、感染者が多い地域に650の装置を設置し、効果的な清掃活動を組み合わせてデング熱対策を行っている。

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