南米ベネズエラのニコラス・マドゥロ独裁政権は、米国制裁に絡む騒動で、同国の国営企業エムトラスール所有のボーイング747型機がアルゼンチンで押収されたことに対する報復として、アルゼンチンからの飛行機がベネズエラ領空を飛行することを禁止した。この措置はアルゼンチンからドミニカ共和国プンタ・カナ、米国マイアミ、ニューヨークなどの観光地への商業路線に影響を与えると12日付エスタード紙(1)が報じている。
この危機は、ベネズエラ国営貨物輸送会社コンビアサの子会社であるエムトラスール社のボーイング747型機が押収されたことに端を発している。同機はブエノスアイレスのエセイサ国際空港で約2年間拘束された後、先月フロリダに送られた。
米国は、この米国製飛行機がイランのマーハーン航空から提供されたものだと主張。同航空は、ワシントンがテロ組織として指定するイスラム革命防衛隊コッズ部隊を支援しているとして制裁の対象になっている。
アルゼンチン政府報道官は「イラン革命防衛隊とつながりのあるエムトラスール社ボーイング747型機の米国による没収命令をアルゼンチン政府が受け入れたことに対する報復だ。アルゼンチンは、テロリズムの友好国からゆすられることを許さない」と反発する声明を発表した。
同機は2022年6月にアルゼンチンに到着し、裁判所の命令により拘束された。乗組員19人(ベネズエラ人14人、イラン人5人)は当初、テロ活動資金供与の疑いで拘束されたが、証拠不十分で結局釈放された。
米国はこの航空機の所有権を主張し、先月正式に保管権が移された。ボーイング747型機はその後フロリダ州南部に送られた。米司法省は当時詳細を明かさず「処分されるだろう」とだけ述べた。
ベネズエラ外務省は「米国とアルゼンチン政府が結託して行った航空機の窃盗を断固として拒否する。ベネズエラは正義を回復し、航空機を正当な所有者に返還するためにあらゆる行動をとるつもりだ」と反論した。
アルゼンチン政府のマヌエル・アドルニ大統領報道官は「独裁者マドゥロが率いるベネズエラ政府に対し、アルゼンチン航空機によるベネズエラ領空の使用を阻止するという決定を受け、外交行動を開始した」と記者会見で述べた。
一方、ベネズエラのイバン・ジル外相は、ソーシャルメディアに掲載されたアドルニ氏の発言の抜粋についてコメントし、アルゼンチン政府をネオナチと呼び飛行禁止を再確認した。
ジル外相は「アルゼンチンのネオナチ政府は、帝国主義者に従順で服従的であるだけでなく、大胆不敵な報道官を持っている。アルドニ氏は海賊行為や盗みの行為の結果を見て見ぬふりをしている」と発言。「ベネズエラは自国の領空において完全な主権を行使しており、アルゼンチンを発着するいかなる航空機も我が国の領土を通過することは、賠償されるまで認められない」と付け加えた。
この措置はアルゼンチン航空だけでなく、アルゼンチンからベネズエラ領空を通過する便を持つ全ての会社に影響を与えるはずだと業界関係者はエル・クロニスタ紙に語った。