先日、新型コロナのパンデミックで自宅勤務となった人や、出かけるよりも家でテレビを見ている方が良いという人達にとって、他人事とは思えないであろう記事を見つけた。
それは、パブリック・ライブラリ・オブ・サイエンスの『PLOS One』という雑誌に掲載された研究報告などに関する3月1~3日付G1サイトの記事で、「長い時間座ったままでいると寿命まで短くなる可能性がある」という目を引く見出しのものだった。
記事によると、座りっ放しだと死亡リスクが1時間あたり2%高まり、1日9時間以上座りっ放しだとリスクが8%に上昇するという。
サンパウロ総合大学でスポーツ医学を教えるルイス・リアニ教授が、1989~2013年に発表された六つの論文を分析した結果、座りっ放しでいる時間とガンや心臓疾患、慢性病で亡くなる可能性の高さとの間に相関関係があることが判明したという。
座ってばかりだと、骨や筋肉、靱帯、関節その他の組織で構成される筋骨格系や心血管系、感情面に影響が出るそうだ。
筋骨格系への影響は、頑強さや抵抗力、スキル、バランスなどの機能が失われ、骨粗しょう症などの危険が増す。骨粗しょう症を起こした人がバランスを失って転べば骨折や寝たきりの原因になり得るし、背骨がゆがみ、姿勢が悪くなれば、慢性的な痛みや筋力の更なる低下を招き得る。
心血管系では、長時間動かないことによる血液循環の低下や心臓の衰弱などをもたらす。下肢の血液循環低下は静脈瘤や血栓症などの原因となり得るし、22年の雑誌『ジャマ・カルジオロジイ』によると、1日8時間以上座りっ放しだと、脳血管障害や心筋梗塞を起こす可能性が最大20%高まり、心不全を起こす可能性が49%高まるという。
座りっ放しの生活で痛みや身体的な衰弱が起きれば自律性の喪失や孤独感、不安、憂鬱感なども引き起こす。23年ジャマ掲載の論文によれば、12時間座りっ放しの人は認知症になる可能性が63%増したという。
サンパウロ連邦大学予防医学科のレアンドロ・レゼンデ教授は、過剰な座位時間を規定する数値はないとする一方で、1日10時間以上座って過ごす人は、それより短い時間座って過ごす人よりも健康上の問題を起こす頻度が高くなる傾向があると述べている。
一般論として運動不足の弊害には体重増加や糖尿病などの慢性疾患の発症が挙げられるが、研究者達が分析した論文の中には過度の座位時間と死亡リスクとを関連付けているものもあり、影響はより深刻であることを示唆している。
しかし、運動不足が種々の病気への罹患・死亡リスクを高めるということは、座るよりも立つことを重視した生活習慣に変更することや運動がこれらのリスクを軽減するということでもある。
デスクワークの多い人やテレビの前で座りっ放しの人などは、今一度、生活習慣を見直す必要がありそうだ。(み)