米国ニューヨークのホテルに宿泊し、一泊分の宿泊費だけで5年間も住みつづけたブラジル人男性が話題となっている。彼は「コロンブスの長男のいとこ」「統一教会に抵抗」などと言いつつ、ニューヨーク市の賃貸安定化法令を悪用して部屋の所有権を主張し、偽造書類でホテル所有権も獲得していた。24日付エスタード紙（1）が報じている。
マンハッタンに位置する四つ星ホテル「ニューヨーカー」は、1930年建築で、かつては世界2番目の規模で知られ、多くの人に愛された。しかし老朽化が進み、1976年に統一教会に買収された後、一部は信者らに占拠され、その由緒ある雰囲気は失われていた。
2018年6月のある日、ミッキー・バレットさん（49歳）という男性がこのホテルにチェックインした。彼が宿泊した2565号室はわずか18平方メートルの小部屋で、一泊分の宿泊費200・57米ドル（現在のレートで約3万円）を支払った。翌日、彼はチェックアウトをせず、部屋に居座りつづけた。
バレットさんはリオ・グランデ・ド・スル州ウルグアイアナ市で生まれ育った。学校で優秀な成績を収めたが仕事が見つからず、1990年代に米国移住。近年家系図に執着するようになり、探検家クリストファー・コロンブスとの直接のつながりを発見したとし、「コロンブスの長男のいとこにあたる」と証拠もなく主張していたこともあった。
バレットさんが5年間も無銭宿泊できた背景には、1969年に制定された賃料安定化法がある。これは同市で賃貸住宅の家賃を規制するもので、不当な家賃の上昇から住民を保護し、低所得者や固定収入の家庭に住居を提供することを目的としていた。
しかし、この法律には知られていない細則があり、1969年以前に建てられた大規模ホテルの客室を、1968年5月には週88米ドル未満で借りる権利があり、宿泊客が家賃割引を申請することで居住者となれるというもの。居住者になればルームサービス、清掃、ジムなど宿泊客と同じサービスを受けられる。
彼はこの法律を悪用し、ホテルの部屋が事実上家賃補助のあるアパートと見なされるべきだと主張し、ホテルを相手に訴訟を起こした。訴訟中、彼は主張を支持するために州法、地方条例、過去の裁判例を引用した宣誓供述書を提出し、彼の主張は裁判所で認められ、審問で判事は彼に有利な判決を下した。
彼はこの判決により、ホテルの部屋を住まいとして利用する権利を獲得。さらに権利証書を偽造してホテルの所有権まで主張し、最終的に裁判所は彼の要求を認めた。だがホテル弁護士によって法的手続きが起こされ、最終的に逮捕され、様々な容疑で起訴された。彼は現在州最高裁の裁判を待っており、有罪になれば数年の懲役刑に処される可能性があると報じられた。
彼は、統一教会の指導者がホテル収入を北朝鮮に送金しており、米国が課した制裁に違反していると信じていたと主張。インタビューで、同宗教団体の財政に対する懸念がホテル滞在の主な理由になったと語り、彼はそれを「アメリカ国民としての愛国的義務だ」と呼び、自分の行為を911攻撃の前にハイジャック犯の一人を阻止した人物に例えた。
