オキナワサントス=文協上映会で約1千人鑑賞=語られぬ悲劇に青年ら衝撃

上映会場の様子

 「私の知っているブラジル社会に対して疑いの気持ちが生まれた」。サンパウロ市のブラジル日本文化福祉協会(文協)ビル大講堂で10日、サントス強制退去事件を題材にしたドキュメンタリー映画『オキナワサントス』(90分、松林要樹監督)の上映会が行われた。上映会には約1000人が来場し、鑑賞した比嘉ガブリエルさん(24歳、2世)は初めて知る事件の内容に衝撃を受けた様子だった。
 ブラジル政府は第2次世界大戦中、サンパウロ州サントス市在住の日本人・日系人に対し、24時間以内の強制退去命令を下した。同作では当時の人々の苦しみと葛藤が語られている。
 比嘉さんは映画を通じて、同事件がこれまで日系社会においても注目されず、忘れ去られようとしていたこと、ブラジル政府が事件を無かったことにしようとしたことに衝撃を受けたという。「被害者の方たちは様々な感情を抱き、その結果、語り継がないという選択をした人もいた。今日、こうしてこの映画を観て、歴史を知ることができて良かった」と語った。
 石田タミリンさん(27歳、4世)さんは、同事件についてインターネットを通じてその存在は知っていたが、詳細は知らなかったという。「ブラジルで日系人はマイノリティー。日系社会で団結してこの事件についてさらに議論するべき。私たちが知らなかった歴史の記録として、この映画はとても貴重」と語った。
 同作の製作に尽力した宮城あきら沖縄移民研究塾代表は、多くの観客が来場したことを喜び、「みな真剣に観てくれていた。事件を知らなかった人たちが、歴史について深く知りたい気持を持ってくれ、感動している」としみじみ話した。

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