2024年3月23日と26日は、ブラジルサッカー史に残る日になる予感がしている。それは17歳のブラジル代表(セレソン)エンドリックが、代表初得点、2試合連続得点を決めた日となったからだ。
試合内容も衝撃的だった。初戦イングランド、2戦目スペインと、共に世界を代表する強豪チームが相手。さらに初戦はロンドンのウェンブリー・スタジアム、2戦目はレアル・マドリッドの本拠地サンチアゴ・ベルナベウという、世界サッカー・ファンの聖地ともいえる場所が舞台だった。エンドリックは7月にレアルに移籍する。ベルナベウでの試合では、レアルファンに対して、大物新人が入団することを自らで宣言するかのような一撃だった。
また、イングランド戦の相手エースは、今後レアルでチームメイトになる20歳の世界的人気選手のベリンガム。スペイン戦には16歳の話題の天才児ヤマルが出場し、まるでサッカー漫画の筋書きかのような背景まであった。
しかし、この2戦でコラム子が胸をときめかせられたのは、彼の驚くばかりの勝負強さに対してだった。イングランド戦では、試合終盤のヴィニシウス・ジュニオルの決め損いのシュートをフォローし、虎の子の決勝点を決めた。そしてスペイン戦で飛び出した、彼が普段から最も得意にしている、相手ディフェンダーの間を鋭く抜けていく左足での豪快なシュートは、チームが1点のビハインドを追っている際に奪った待望の同点弾だ。
この類まれな勝負強さにこそ、コラム子はエンドリックの将来の大物の資質を見た。単に記録が凄いだけの選手じゃない。本当に優れたレジェンドと呼ばれる選手たちは、ファンたちが「ここで試合をなんとかしてほしい」という時に期待に応えて試合を決めることができる存在のことだ。
よくよく思い出してみても、まだコラム子が本格的にサッカー・ファンになる前の、ロマーリオ、ロナウド、ロナウジーニョといった選手の全盛時がまさにそうだった。
あの当時は個人的に伯国に縁がなく、遠巻きに「圧倒的に強いチーム」としてセレソンを見ていて弱い方の対戦相手のチームを応援していたものだが、接戦でも彼らは憎らしいくらいに勝負を決めていった。
エンドリックに感じたのは、まさにこのオーラだった。そしてそれは、どんなに記録を作ろうがどうしても厳しい評価をされてしまうネイマールになかなかできないことでもある。
ここからセレソンの伝説がよみがえるかもしれない。そんな希望も生まれた瞬間だった。(陽)