日毎叢書企画出版(前園博子代表)の『楽書倶楽部』第72号が15日に発行された。読みどころ満載のコラム40篇が掲載された充実の132頁だ。その断片を紹介する。
毛利律子さんは「学びたいことが見つかる幸せ」の中で、《感情的行き詰まりを感じるときはいつも、掃除を実行しています。トイレも、窓も、床もピカピカに磨き上げる。ゴミを分類、捨てるものは捨てる。極端なことを言えば、警察のグリッド調査(鑑識が30センチ間隔で証拠を探しながらする捜査)のように、徹底的に掃除をすると、魔法のようにインスピレーションが沸き起こって、とても幸せな、新鮮な気持ちになります》と薦めている。
小林音吉さんは「生きているだけで丸儲け」で驚くべき体験を披露している。《もう十数年前になりますが、日本で働いていた頃のことです。暑さの厳しい夏でした。アパートの隣人が孤独死したのです。ぱったりと生活音がしなくなって二日後から、隣の部屋の換気扇から異臭が漂い始めたのです。直ぐに大家さんに連絡し、警察に電話するように伝えました。(中略)あの時の異臭は数カ月の間、鼻の奥から消えずに残り無くなりませんでした》
寺田幸恵さんは「恋人の死」で、21歳の頃に3度デートした東大生との切ない青春の思い出を綴る。《仕事を終え宿舎に帰った時「上原さんに面会ですよ」と放送された。三階から面会に行ってみると、知らない人、初老の顔をされている方が、「広志が自殺してしまった。そしてこれをあなたにと…」と腕時計を差し出された。私はびっくりして声も出なかった。
「ブロバリン四十錠を一度に飲んで死んでいて、胃洗浄したけど遅かったので効果は全然で…」と。
広志とデートした最後の日、レストランでコカ・コーラを飲みながら彼はこんなことを言った。「小さい子を連れて楽しそうにしている人をみると、何か幻のようで僕にはそんなことはできない、社会生活というものが不思議で仕方がない」と頭を抱えているのだった》
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