イエスの再臨と主張する教祖=「キリスト」に正式改名成功

インリ・キリスト・タイス氏の新しい身分証明書(4日付メトロポレ・サイトの記事の一部)
インリ・キリスト・タイス氏の新しい身分証明書(4日付メトロポレ・サイトの記事の一部)

 「イエス・キリストの生まれ変わり」と主張する新興宗教の教祖男性が、自分の正式名称を「インリ・キリスト」に改名することに成功したことで波紋を呼んでいる。4日付メトロポレ・サイト(1)が報じた。
 この氏名変更は、2022年に連邦議会で可決され、大統領によって承認された連邦法14・382号により可能となった。アルバロ・タイス氏(76歳)は政府発行の公文書に記載される自身の氏名を「インリ・キリスト・タイス」に変更する申請を行った。
 「インリ」とは、ラテン語の頭文字INRI(ユダヤ人の王、ナザレのイエスの意味)で、キリストが十字架にかけられた際に掲げられた罪状書きを指す。
 タイス氏の新しい身分証明書には、「インリ」と直筆のサインと共に、トレードマークのプラスチック製の茨の冠を被った写真が印刷されている。彼は65歳以上であるため、この書類には有効期限がなく、死亡するまで使用されることになるという。
 新しい法律により、裁判手続きなしで直接名前の変更ができるようになった。以前は、弁護士を雇い、明確な変更理由を提示し、裁判官の判断を待つ必要があったが、それでも申請が却下される可能性があった。
 現在は18歳以上で100〜400レアル(約3千〜1万2千円)の手数料を支払えば、全国7800カ所の登記所に直接申請するだけで受理される。タイス氏は2000年10月に、既に出生証明書上の名前を変更しており、当時、この措置はパラナ州裁判所の判決によって可能となった。
 タイス氏は首都ブラジリアの中心部から30km離れたガマのカーザ・グランデ農村地区に、宗教団体「聖三位一体の至高普遍秩序教団(Soust)」を1982年に設立した。その創立者として有名で、何十回もテレビ番組に出演しているという。
 同宗教団体には服装、行動、思考、食事まで細かい決まりがある。教義によれば、浄化するのは純水だけだとの理由からトイレットペーパーの使用は禁止だ。従順であることは、Soustへの入信を許された者の基本原則のひとつであり、信者はタイス氏の髪や足の爪を切るだけでなく、家事全般を進んでやらなければならない。
 現在、タイス氏は15人の女性信者と3人の男性信者と共同生活している。彼らの大半はタイス氏が宗教指導者としての活動を始めたリオ・グランデ・ド・スル州出身だ。
 弟子たちは一般に30歳以上で、職業を捨て、性生活を断ち、親族との密接な関係を放棄している。彼らは親族に連絡したり、面会することは可能だが、タイス氏の許可を得なければならず、監視下に置かれていることも理解していると言う。1人で外出することもない。
 それでも弟子たちにとってSoustの家は「エデン」であり、弟子の1人アドリさんにとって、囚われているのはSoustの塀の外に住む人々なのだという。「私たちは、大多数が暮らす混沌とした刑務所的な世界にいる人々に、Soustの領域に入るための扉を開いているのです。私たちは肉体的にだけでなく、精神的にも自由なのです」とその彼女は語った。

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