岸田文雄首相は4日午後7時30分、サンパウロ市のホテル「チボリ・モハレジュ・サンパウロ」で日伯両メディア合同の内外記者会見を行った。ブラジルメディアからは、今後の日系社会との関わりやアマゾン開発、地球温暖化など環境問題に対する日本の姿勢について質問が行われ、日本メディアからはリオ・デ・ジャネイロで今年開催されるG20での日本の役割などの外交姿勢、国内の政治問題について質問が行われた。
岸田首相は冒頭で、総理就任後初めて行った今回の中南米訪問を振り返った。首相は今回、ブラジルとパラグアイを訪れた。首相は両国を訪れた感想として、鉱物、エネルギー、食糧など豊富な自然資源があること、若者人口が多く、大きな成長性を有する国であることを実感したと述べた。一方で格差や貧困など社会課題を抱えているのも事実だとし、日本の目指す人間の尊厳が守られる世界を作るため、両国をかけがえのないパートナーとして、協力関係を強化していくと話した。中南米諸国にある300万人を超える日系社会との連携強化は重要な課題であると強調した。
本紙ポルトガル語姉妹紙「Nippon Já」記者から「日本は今後、5世、6世の若い日系世代とどう接していくのか」と問われると「今回、日系人の方の生の声を聞くことが出来ました。日系人の方々は各国で様々に活躍されており、中南米諸国の日本に対する信頼や尊敬の礎となっています。日系人の方々は日本と中南米を結ぶ大切な絆だと考えており、一層連携を強化していきたいと考えています。日系社会の世代交代が進む中、若い世代との関係強化は重要であります。若い方々との絆は今まで以上に太く、強いものにしていきたいという思いから、中南米の日系社会との新しい交流プログラムを立ち上げました。今後3年間で1千人の人的交流をしていきます」と語った。首相に就任してから、人への投資を政策の柱として掲げてきたと話し、日本と中南米を繋ぐ日系人の活躍を力強く後押ししていきたいと強調した。
ブラジルメディアから、アマゾン開発問題をはじめとする地球温暖化の解決について質問されると、「世界の肺と言われているアマゾン地域の持続的な発展は日本にとっても他人事ではありません」と述べ、ルーラ大統領と共に「日・ブラジルグリーンパートナーシップイニシアティブ」を立ち上げたことを説明した。「日本の先進的レーダー衛星、AIの活用を通じてアマゾンの違法伐採対策に協力するなど、アマゾン地域の持続可能な発展に向けて貢献を続けていきたい」と述べた。
日本メディアからは「グローバルサウス」と呼ばれる新興国家群とどのように連携していくのか、リオ・デ・ジャネイロで今年開催予定のG20では日本としてどういった役割を担っていくのかなど外交姿勢について問われ、「今回の訪問はグローバルサウスとの連携という観点から大変有意義だった。ルーラ大統領とも優先課題について幅広く話し合い、日本としては昨年のG7広島サミットの成果を踏まえつつ、ブラジルと連携し、G20成功に向けて協力していく」と述べた。
自民党の政治資金問題や憲法改正、衆院解散総選挙についても質疑が行われ、対応についての意見を述べた。