ブラジル沖縄県人会(高良律正会長)はサンパウロ市の同本部で21日午後2時ごろ、同県人会代表者らと奥原マリオ純さんで、「大戦中に起きた6500人の日本移民サントス強制立ち退き」や「終戦直後の勝ち組幹部172人のアンシャッタ島監獄収監」に代表される戦中戦後の日本移民への迫害に対してブラジル政府に謝罪を求めていた件で、人権・市民権省の恩赦委員会(Comissão de Anistia)が7月25日に審議を行うことになったと、日本メディアの特派員らに説明会を行った。
説明会の冒頭、高良会長は「第2次世界大戦中に起きたサントス強制退去の事件をより多くの人に知ってほしい。4月24日に行われた恩赦委員会のアルメイダ委員長とのオンライン会議では、『戦争に関わる日本移民への迫害の事実を掘り起こしてくれ、謝罪する機会を作ってくれたことに感謝する』とまで好意的に言ってくれた。だが、蓋を開けるまで結論は分からない。先祖のためにも力を抜かずに当日に臨みたい」との真摯な気持ちを述べ、日本メディアに協力をお願いした。
日本メディアからは、謝罪請求の発端やこれまでの流れ、この事件が移民史の中でどのように語られてきたのか、審議当日について等多くの質問が投げかけられた。
質問を受けて奥原さんは、終戦直後に起きた勝ち負け抗争を描いたドキュメンタリー映画『闇の一日』(2012年)を制作した際、最初のテロ事件の直後3千人もの勝ち組日本移民が警察に一時逮捕され、うち140人余りが臣道連盟幹部だったというだけで監獄島アンシェッタ送りになった事実を知り、2012年にサンパウロ州真相究明委員会でその件を審議するように働きかけ、「委員会の名において日系コロニアに謝罪する」との言葉を州委員会レベルで引き出したことを説明。。
その後、奥原さんはやはり連邦レベルでの謝罪が必要と考えて、恩赦委員会に申請、2018年に沖縄県人会がそれに加わったことで一気に動きが強まったという経緯を説明した。
ブラジル沖縄県人移民塾の宮城あきら代表は、県人会が加わった経緯に関して、「サントス強制立ち退き事件の被害者リストが発見され、6500人の63%が沖縄系だったことが判明したことで、それまで大きな問題意識を持ってこなかった過去を反省して、会として取り組み、機関誌『群星』では22家族の立退き証言を集めて掲載してきた。それが22年6月の審議では7対2で否決されたと聞き、本当に残念に思った。今回こそと再審議に期待を高めている」と力を込めた。
昨年、政権が変わって恩赦委員会から再度審議が可能という連絡が入り、昨年9月に再申請し、先月24日の打ち合わせで7月25日の審議で議題に上げられることが決まった。
宮城代表らは「ありもしないスパイ容疑をかけられ苦しんだ我々の先祖の名誉を回復すると同時に、新しい世代が胸を張って先祖の物語を語れるように正しい歴史を残したい」と何度も繰り返し想いを強調した。
沖縄県人会では7月25日の審議の場により多くの人が出席してコミュニティの気持ちが伝わるよう、首都へのツアーを予定している。