リオ・グランデ・ド・スル州出身のボート選手が、同州大水害の被災者支援ボランティア活動に専念するため、人生初だったオリンピック出場を断念した。この決断は、パリ大会まで80日を切った時期で行われたと22日付G1サイトなど(1)(2)が報じた。
これまで2人の選手に多くのものをもたらした「水」が今、彼らの郷土を破壊する要因となっている。ブラジル代表のボート選手、エヴァウド・マチアス・ベッケル選手(32歳)とピエドロ・トゥッチェンハーゲン選手(22歳)のペアは現在、国内および南米チャンピオンとして君臨している。リオ・グランデ・ド・スル州で洪水が始まったとき、2人は同州都のポル・アレグレ市でトレーニングをしていた。
ピエドロさんはすでに2023年11月の洪水で、グアイバ河畔の自宅で被災し、救助された経験を持つ。「コンロ、冷蔵庫、ベッド、ソファ、洋服ダンスなど多くを失った。このような困難に直面した人々だけが、それらの価値を知っている」と彼は言う。
今回はエヴァウドさんが被害を受け、別の場所に母親と住む、自分の6歳の娘を救出する必要があった。「腰まで水に浸かり、娘を肩車して救助した。娘はとても神経質になり、移動手段も出口もなかった」と振り返った。
ピエドロさんとエヴァウドさんの初のオリンピック出場という夢は、同州での救助活動に取って代わられた。彼らにとって今最も優先されるは、自分の同胞の復興を助けることになった。
彼らが集められた支援物資を運んでいる間、スイスではボート競技のプレオリンピックが始まっていた。それは、7月に開催されるパリ五輪に出場するための最後のチャンスだった。
ピエドロさんは「ここで見ているものをすべて捨てて、競技に行くことなんてできない。オリンピックは4年に1度あるから、次の機会にチャレンジすればいい」と述べた。
一方エヴァウドさんは、「避難所に娘を残して、ここから出ることなんて考えられない。今、僕らのボートはここにある。すべてがうまくいくまで立ち止まるつもりはない」と強調した。
グアイバ川の水位が下がり、二人はクラブの船庫に戻って残ったボートを救おうとした。そこには100隻以上のボートがあったが、浸水被害で傷つき、損失額は少なくとも500万レアル(約1億5千万円)だという。
ボートを見たエヴァウドさんは、「本当に悲しい。自分にとっては相棒のようなボートが傷つくと、どんな選手も心が痛む」と明かした。
彼らの決断により、地域の住民が救われている。2人は「ここで起こったことは、経験したすべての人の心に刻まれるだろう。僕らはここで人々の役に立ちたい」と話した。