ブラジル沖縄県人会(高良律正会長)と奥原マリオ純さんが21日にサンパウロ市の同県人会本部で、人権・市民権省の恩赦委員会(Comissão de Anistia)が7月25日に戦中戦後の日本移民への迫害に対してブラジル政府に謝罪を求めていた件について審議を行うことになったことの説明会を、日本メディア特派員向けに行った。その結果、同件に関する報道が日本で大々的に行われた。しかも23日午前には、林芳正内閣官房長官が記者会見でこの件に関して「我が国としても関心をもって注視していきたい」とコメント。高良会長は「結果がでるのはあくまで7月25日。それまでぬか喜びをしないように気を引き締めたい」と述べた。
読売新聞は23日付朝刊面トップ記事で、《ブラジル 日系人収容 月審議 人権侵害 謝罪意向》(大月美佳リオ特派員)との見出しで大々的に報じた。過去ブラジル案件で朝刊面トップはごく珍しい。しかも恩赦委員会のエネア・アルメイダ委員長に直接取材し、そのやり取りを関連記事として面にも掲載した。その中でアルメイダ委員長は《『日本人である』という単純な理由でブラジル国家に迫害された残酷な出来事を多くの人に知ってもらい、国として二度と同じ過ちを繰り返さないことの保証をすべきだ》と語ったと報じた。
朝日新聞も23日付で《第2次大戦中の日系移民迫害 ブラジル政府、謝罪について7月に審議》と報道。共同通信の配信を受けて23日付産経新聞も《ブラジル日系移民迫害、7月25日に再審議 政府謝罪を判断 「敵性外国人」で自宅立ち退き》、沖縄タイムスも《日系人迫害 謝罪を再審議 ブラジル「サントス事件」 沖縄県人会など昨年申請》、時事通信の配信により東京新聞は23日付夕刊で《日本移民迫害 謝罪を審議 ブラジル7月25日会合》などと報じた。
琉球新報は沖縄から宮沢之祐記者がオンラインで県人会の説明会を取材し、23日付で《日系強制退去 謝罪再審議 ブラジル側、7月判断へ》との見出しで「現地の日系社会では年ぶりの名誉回復への期待が高まっている」と報じた。
23日午前、林芳正内閣官房長官は記者会見で日本経済新聞記者からこの件に関する質問を受け、「報道は承知している。ブラジル日系人は日本とブラジルの絆の象徴。我が国としても関心を持って注視していきたい。ブラジル日系人の方々は勤勉さをもってブラジルの発展に大きく貢献されてこられた。良好な国間関係の基礎には日系社会の存在があり、これまで両国の架け橋として活躍してこられた。引き続き日系社会との連携を強化していきたい」とコメントした。
高良沖縄県人会長に日本側の反応に関する感想を尋ねると、「日本のメディアが高い関心を寄せてくれているのは本当に嬉しいが、ブラジルには『勝負の前に凱歌を歌ってはいけない』という言葉がある。全ては審議が終わらないと分からない。ブラジルではすんなりいかないことが多い。結果が出てから祝いたい」と表情を引き締めた。