リオ・グランデ・ド・スール(RS)州大水害が発生し、約1カ月が経とうとしている。現地では水が引いたエリアの家屋や店舗の清掃作業が始まり、避難所に逃げていた人々が少しずつ家に戻り始めている。
「避難していた人々の多くは家に戻った。でも、まだやるべきことはたくさんある」―ポルト・アレグレ市内の自宅近くにある避難所で、5月初旬からボランティアを務める看護師のジゼリ・ソウザさん(44)は、現在まで3週間以上に渡って避難者の健康のケアなどに尽力してきた。
ジゼリさんは数年前に日本の介護を学びたいと考え、JICAの研修制度を使って1カ月間、宮城県仙台市で音楽リハビリ療法を学んだ。学んだことを日系社会に還元したいと、大水害以前は、南日伯援護協会で高齢者を対象にした音楽を使った体操を毎週1回行っていた。音楽を楽しみ、簡単な運動を通じて心を楽にしてもらおうと、現在は避難所でも音楽リハビリのボランティアを始めた。
州防災局によると、25日時点のRS州全体の避難民は約58万人。全員が避難所にいるわけではなく、友人や親戚の家に避難している人もいる。最も多くの人々が避難所にいたのは12日の8万1170人で、25日は5万5791人と減少傾向にある。
ジゼリさんは教会にある避難所で、医師と看護師らでチームを組んでボランティア作業に当たっている。ほぼ毎日通い、血圧を測ったり、傷の手当ての方法を教えたり、薬を配ったりと健康管理を主に行う。ストレスが溜まりやすい避難者のために、時には愚痴や悩み相談に付き合うことも。避難所には時折こうした相談を行う心理カウンセラーのボランティアもいるという。
自宅が浸水し全てを失った人や、マンションの1階が浸水し戻れない人もいる。ジゼリさんの自宅も浸水はしていないものの、普段の訪問看護先に行くには、道を迂回するなどして倍以上の時間がかかる。
いつも通りの仕事もままならない中、ボランティアを続けるのは「悲しいニュースを見ると、悲しみと苦しさで心が苦しくなる。誰かのために何かできることに安堵している」と居ても立っても居られない気持ちからだ。
避難所には伯国各地から送られた支援物資や食糧が十分にあり、最低限の生活は送れているという。ジゼリさんは「避難所生活が長く続く人もいると思う。支援も継続していく。人生は続くのだから」と力を込めた。