「劇団1980」(柴田義之代表)による〝ブラジリアンタウン〟群馬県大泉町をモデルとした演劇「いちばん小さな町」が、7日(金)から9日(日)まで東京・六本木の俳優座で好評再演中だ。これは、21年10月に瀬戸口郁さん(文学座)が劇団1980に書き下ろし、高橋正徳さん(文学座)が初演出して、翌年に第23回テアトロ演劇賞特別賞を受賞するなど大きな反響を得た話題作だ。
同劇団は『素劇あゝ東京行進曲』(2004年)『ええじゃないか』(2008年)公演など、過去2度も伯国で長期公演を行った実績がある日本で唯一の劇団だ。その経験を踏まえ、人の動きがグローバル化した現代を鋭く描く。
物語は、東京で家族と暮していた亀山和男が、北関東の小さな町『小清水町』にある生家の旅館を継ぐために戻ってくるところから始まる。町は1990年の入管法改正で4千人の日系伯人が定住するようになり、「共生」の課題と不景気のための「町おこし」という大きな課題をかかえていた。
和男の父が先導して『サンバパレード』を実施して町が観光地として見直されたが、02年サッカーW杯で伯人住民が大騒ぎを起こしたことで、地元住民の反発が強まって中止に。
パレード復活に反対する地元の声が多い中で、和男の父が「パレードの復活を」との声を上げたところで病気のため亡くなったことを、帰ってきた和男は知る。多文化共生とは何なのか―現代的なテーマをはらんだ人間ドラマに発展していく。
6月から地方旅公演を予定。〈関越〉本庄虹の演劇鑑賞会、高崎演劇鑑賞会、いせさき演劇鑑賞会、〈北海道〉旭川市民劇場、NPO法人演劇鑑賞会北座、函館演劇鑑賞会。7月は〈中国〉岡山市民劇場、西大寺市民劇場、倉敷演劇鑑賞会、玉島事務所、倉敷演劇鑑賞会、いずも演劇鑑賞会、松江市民劇場、米子市民劇場、鳥取演劇鑑賞会、安佐南市民劇場、福山市民劇場、柳井演劇鑑賞会、周南市民劇場、広島市民劇場など。
なお、柴田代表と文学座の劇作家の瀬戸口郁(せとぐち・かおる)氏は、昨年8月12日から同29日まで続編制作のため当地に滞在して取材。聖市在住アート・プロデューサーの楠野裕司氏、久保ルシオ氏、松本ウーゴ氏が支援協力。サンパウロ市内をはじめ聖州バストス、アリアンサ(ミランドポリス)、弓場農場、ペレイラ・バレット等を巡り、約50人に口頭による聞き取りを行った。
今作は、今後制作される移民3部作における第3部を前倒しして作られた。第1部の戦前移民編、第2部の戦後移民編が制作され、次回作は2025年公開予定。柴田氏は昨年来伯時、「(日本に住む)日本人が希薄になっている熱烈なもの、ピュア(純粋)なものを3部作を通じて感じてもらいたい」と新作への意欲を見せていた。