6月12日、5月末からの上昇が続いていたブルードルは1300ペソに達した。インフレ以上に懸念されていた為替レートの変動にもかかわらず、ハビエル・ミレイ政権は国会で初勝利を収めた。これにより、国のリスクは80ポイント低下し、国債は上昇、アルゼンチン株はウォール街で最大13%急騰した。
12日のミレイ大統領の演説
ミレイ大統領は12日午前中、ラ・ルラル農牧展示場で開催されたExpo EFIアルゼンチン経済フォーラムに出席し、企業家や投資家を前に演説した。自身の経済政策路線の変更がないことを強調し、「2001年より悪化の一方であった社会指標の下、破綻した中央銀行を引き継いだ」と述べた。
また、「財政調整は無償では困難である」と強調し、「基本法」法案の承認遅延を指摘。「経済調整が社会に大きな衝撃を与えることは分かっているが、基本法法案通過に6カ月もかかっている。もっと早く可決されていれば、調整の痛みが軽減されていただろう」と述べた。
さらに、反政府ピケやデモを行っている団体の資金源に言及、「社会支援は本当に困窮している人たちの手に渡るべきであり、現在はそれが大きく改善され、治安も回復し、公約どおり実行中である」と述べた。「政治において重要なのは人々から受け取った税金で何を行うかである。10%はチェーンソーにかけて、残りはミキサーにかけよう」と豪語した。
デモと機動隊の衝突
経済改革法案「基本法」の審議をする国会議事堂外では同日、ハビエル・ミレイ大統領に抗議するデモ参加者らに対し、機動隊が催涙ガスや放水銃が使用した。
抗議者たちは、改革法案がアルゼンチン国民を苦しめるものだと訴え、火炎瓶や石を投げ、報道機関の車や市営レンタサイクルに火を放った。多数の負傷者が報告され、地元メディアは現場を「戦場」のようだと伝えた。野党は国家による弾圧だと非難した。
改革法案の内容と賛否
全328条からなる改革法案には、経済非常事態宣言や年金削減、労働者の権利を弱める雇用政策が含まれている。この法案には左派政党や労働組合、社会団体が反対している。12日深夜、上院での投票では賛成票と反対票が36対36と拮抗し、議長を務めるビクトリア・ビジャルエル副大統領の賛成票により、法案は上院で承認された。この法案は最終承認のために4月に通過した下院に戻されることになった。
経済改革の影響と市場の反応
「基本法」並びに「財政パッケージ」には国会で変更が加えられたにもかかわらず、ハビエル・ミレイ政権は国会で初勝利を収めた。この結果、投資家たちはこれを祝し、懸念されていたペソ安は沈静化した。6月13日、市場開始時には1220ペソに落ち着き、前々日の1200ペソ程度から12日の1300ペソの壁を破った後、急に後退した。
ミレイ政権の改革実績
ミレイ大統領は2023年12月の就任以来、一部の国立機関を廃止し、内閣の規模を半減、公務員5万人の労働契約を更新せず、新規の公共事業契約を停止した。4月のインフレは8・8%に抑え込んだが、年間インフレ率は300%に抑え込むかどうか。電気やガスなどの公共サービスや交通機関に対する補助金を廃止した。
GAFAに大もてのミレイ大統領
12日付インフォバエ紙(1)は、「イーロンマスクは『もし彼ら(左派政治家)がミレイを止めなければ、アルゼンチンは過去100年間になかったような成長と繁栄を手にすることになるだろう』とコメントした」との記事を出した。なお大統領府スポークスマンによると、「イーロンをはじめGAFAなどのCEOがミレイ大統領と写真を撮りたがるのであって、ミレイが撮ってもらっているのではない」と説明しているという。(6月13日記 ブエノスアイレス 相川知子)
(2)https://x.com/solotransito/status/1800990202887799072/photo/1