まずは、この度のリオ・グランデ・ド・スル州において発生した洪水被害において、犠牲になられた方々に心からの哀悼の誠を捧げるとともに、被災された方々に対し謹んでお見舞いを申し上げます。
合わせまして、ブラジル日本移民116周年における貴紙ブラジル日報「移民の日特別号」の発行にあたり、今日のブラジル日系社会の繁栄を築かれた先人の御苦労を偲び、開拓先没者の御霊に対し衷心から哀悼の意を表します。
さて、皆様ご存知の通り5月の初めに、日本国内閣総理大臣の岸田文雄閣下がここブラジルを公式訪問されました。その際、岸田閣下およびブラジルのルーラ大統領両首脳は、昨年のG7広島サミット以来となる再会を喜ばれたという報道がなされました。私は、当時そのサミットを終えた感想として我々ブラジル日系人に向けて語られた、岸田閣下の次の言葉を思い出しました。
「日本とブラジルの長きにわたる強い絆は、皆様がこれまで力を尽くして築いてこられた日系社会に対する計り知れないほどの重要な信頼感によって撚り上げられたものです。ルーラ・ブラジル大統領を招待申し上げ首脳会談を行いましたが、その中で同大統領から、日系社会に大変敬意を有しているとの発言がありました。皆様の御活躍に改めて感銘を覚えながら一日本人として心震えるような誇らしい気持ちになりました」
そして今回我々は直接岸田閣下より「一世紀の歴史を経た今、この地では世界最大の日系社会が輝きを放っています」というお言葉を賜りました。
ブラジル日本移民116周年を祝賀する本日、私は先駆移民の御霊にこの言葉を余すことなくご報告したいと存じます。先駆移民が流した汗と涙はこの地を潤し、艱難辛苦の中にあっても蒔かれた「責任感」「向学心」「誠実さ」「忍耐」「連帯感」「感謝」「親切」「敬意」という精神の種は日本移民の子孫に脈々と受け継がれ成長し、いつしかこのように我々日系社会は、両国首脳らの心を揺さぶるほどの大木になったという事実を。お陰で私たちは、現在ここブラジルで、日本移民の子孫であるということに誇りを持って生きることができております。心より感謝申し上げます。
ところで今日、その大木にたわわに実った果実からまた新たな芽が出はじめ、ブラジル日本移民100周年を過ぎた頃を境に次の段階へと移行する時期に突入したと言うことができます。
今回、岸田閣下のサンパウロ州立大学での講演でも「我々の関係は、互いを尊重し、学び合う、重要なパートナーへと昇華しました」と、改めてそのことが強調されました。そして実際に、今回の岸田閣下のご来伯に伴い、日本の様々な企業や法人とブラジルの各関係機関との間で37項目に及ぶ基本合意が締結された他、今後3年間で約1千名の交流を実現するという、中南米日系社会との交流における新たなプログラムの立ち上げも宣言されました。今後我々は、若い世代を主役に据える取り組みに引き続き注力しながら、一日も早く新しい段階への歩みを軌道に乗せるべく尽力してまいる所存でございます。
最後になりましたが、日系社会の皆様、ブラジル日報をご愛読の皆様のご健勝を祈念し、ブラジル日本移民116周年記念における私の挨拶とさせて頂きます。