パリ五輪の開幕がいよいよ来月7月26日に迫る中、大会出場枠も次々と確定し、選手たちの最終調整も着実に進んでいる。パリでの五輪開催は3回目となり、前回大会からちょうど100周年となる記念すべき今年、史上初めての試みとしてセーヌ川で開会式が実施される。そのほか、競技会場が街の中心部に点在し、一般参加者を対象としたマラソン競技やスタジアム外での交流イベントも数多く計画されており、ファンにとって選手と間近に触れ合える魅力的な大会となるはずだと、5月24日付テラ・サイトなどが報じている。
東京2020大会で獲得した21個のメダル（金7個、銀6個、銅8個）の記録を更新するため、ブラジルの選手団は強力なチームを率いてパリに臨む。ブラジルオリンピック委員会（COB）が発表した6月5日現在の情報によると、ブラジルは31種目で226の出場枠を確保しており、その内訳は女子が130、男子が89、さらに馬術の7種目は性別が定められていない。
またこの中には複数の日系人アスリートも含まれる。116年前にブラジルに到着し、当地の社会発展に貢献してきた第一世代の努力から受け継がれる「日系レガシー」を土台に、スポーツ界でもその実力を発揮する選手たちに要注目だ。
メダル獲得が有力視されるブラジル人選手たち
5日付グローボ・エスポルテによると、現在一番安定しており、金メダルの大本命と評価されたのは、ボクシングのベアトリス・フェレイラ選手（31歳）だ。彼女は、東京五輪ではブラジル人で初めて決勝に出場し、銀を獲得。昨年の汎米競技大会で優勝し、今年4月にはプロボクシングの世界チャンピオンとなった。2022年以来負けなしの強者だが、パリ五輪ではアイルランドのケリー・ハリントン選手との金争いになると見られている。両者はまだ対戦経験がない。
国民人気が高い体操種目のレベッカ・アンドラーデ選手（25歳）もメダル獲得が期待されている。2023年世界選手権で跳馬の金を含む、五つのメダルを獲得。今年4月にイタリアのイェーゾロで行われた大会では、跳馬でほぼ完璧な演技を披露した。
サーフィンのガブリエル・メジーナ選手（30歳）も2023年の世界ランキングでは6位だがメダル圏内だ。彼は2015年、米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」リストに名を連ねたが、絶頂期にうつ病を患い競技から離れた経験を持つ。今年3月初めにプエルトリコで開催されたISAワールドサーフィンゲームズで優勝し、五輪出場権を手に入れた。サーフィンの競技会場が、フランス領ポリネシアのタヒチ島であることも、また注目を集めている。
また若干16歳で絶好調、スケートボードのライッサ・レアル選手についても見逃せない。13歳で出場した東京五輪では銀、2023年の世界選手権では金を獲得し、実力は不動のものとなった。5月に中国で開催されプレオリンピック大会では驚異的なパフォーマンスを見せつけて、金を獲得した。
スケートボード界の貴公子、アウグスト・アキオ選手
同グローボ・エスポルテの評価ランキングの16位に堂々ランクインしたのが、スケートボードの日系選手アウグスト・アキオ選手（23歳）だ。彼の種目は「パーク」であり、前出のライッサ選手の「ストリート」とは、使用するコースや障害物の形状とスタイルが異なる。
アキオ選手はパラナ州クリチバ市出身。「（日系人の）謙虚さを失わず、常に他人を思いやる態度は、練習場でも顕著に見られ、私たちの概念を覆された。彼はいつも自身のパフォーマンスの洗練に余念がない」と友人で同競技のダビソン選手が評価した。
同競技は東京2020で五輪デビューを果たし、今回のパリ大会ではルーヴル美術館と凱旋門の間に位置する市内を代表する観光地、コンコルド広場で行われることでも注目されている。
安定した日系卓球選手の混合ダブルスにも期待
ブルーナ・タカハシ選手（23歳）とヴィットール・イシイ選手（28歳）は、比較的早くから五輪への出場を決めていた日系コンビだ。二人はサンパウロ州出身の幼馴染で、日系人が集まる卓球クラブで頭角を現した。競技の内外で信頼関係を築いており、昨年の汎米大会で銀メダルを獲得した際、ブルーナ選手は「いつもお互いを支え合っているので、集中力を切らさずに済んだ」とコメントしている。
5月23日にリオで開催されたWTTコンテンダーではスロバキアの強豪を破って優勝して、さらなる弾みをつけている。
ブラジル卓球連盟は4日、五輪出場選手を正式に発表。レオナルド・イイズカ選手、ラウラ・ワタナベ選手、そして、ブルーナ選手の妹ジュリア・タカハシ選手がパリ行きの切符を手にした。
ルカ・クマハラ選手の解説にも期待
グローボ局は今回の五輪大会で初めて、トランスジェンダーの解説者を起用したことで注目を集めているが、その人物こそサンパウロ州出身の日系人卓球選手であるルカ・クマハラ氏（28歳）だ。
クマハラ氏は2023年8日、国際卓球連盟（ITTF）から男子競技に参加する許可を受けたが、それ以前は女性として2012年、16年、21年の3大会連続で五輪に出場した経験を持つ。解説者として競技を分析するのは今回が初めてとなる。
クマハラ氏は「解説者に選ばれることは、私がこのスポーツの中で経験し、達成し、表現してきたことのすべてが認められたということ。トランスの人々がより多くのスペースを占めるという可視性の問題にとっても非常に重要なことであり、この機会は大変重要な分岐点であると思います」と、自身の新たなキャリアのスタートに意気込みを示した。（平元麻依子）
（4）https://interativos.ge.globo.com/olimpiadas/termometro/termometro-olimpico-paris-2024（6月5日更新）メダル有力候補
（5）https://www.cnnbrasil.com.br/esportes/outros-esportes/rayssa-leal-conquista-etapa-do-pre-olimpico-de-skate（5月19日）ラリッサ
（8）https://olympics.com/ja/news/skateboard-park-championship-uae-men-semifinal-result（アキオ）
（9）https://olympics.com/ja/news/skateboard-park-championship-uae-men-semifinal-result（アキオ）
（13）https://www.brasilnippou.com/2023/230810-18brasil.html（クマハラ）
