ペルーのロスト渓谷で強盗被害=救助求めて砂漠を25キロ歩く

ペルーの「キャノン・デ・ロス・ペルディドス」を訪れたアンドレッサさんとパウロさん(11日付G1サイトの記事の一部)
ペルーの「キャノン・デ・ロス・ペルディドス」を訪れたアンドレッサさんとパウロさん(11日付G1サイトの記事の一部)

 南米ペルーで砂漠ツアーに参加していた観光客グループのバンが、武装強盗団に襲われて砂漠のど真ん中で車両を奪われ、助けを求めて25kmも歩くという事件が発生。一行にはブラジル人カップルも含まれており、「まるで映画のようだった」と語る壮絶体験を11日付G1サイト(1)が報じた。
 パラナ州出身のアンドレッサ・アレシャンドレさん(27歳)とパウロ・リカルド・ダ・クルスさん(32歳)のカップルは、ペルー南部に位置する神秘的なロスト渓谷(キャノン・デ・ロス・ペルディドス、「失われた渓谷」の意)を観光中に絶望的な状況に見舞われた。彼らが参加していた観光ツアーの一団が襲撃され、携帯電話の電波が届かない人里離れた地域に置き去りにされたのだ。
 これは5月に起きた出来事だったが、7月8日に同カップルがSNSに投稿した動画で一躍話題となった。アンドレッサさんは、「何もない場所をひたすら歩いたわ。眼前には砂だけが広がっていて、文明のある場所にたどり着くまでの距離が全く掴めない。とても絶望的で色々な事を考えさせられた。幻覚を見始めた時は、面白いとさえ感じたわ。本当に映画みたいな出来事だった」と振り返った。
 二人は現地旅行代理店でツアーを予約し、24人ほどのグループでこの観光名所を訪れた。ツアーから戻り、一行を乗せたバンがあった場所に近づくと混乱した状況に遭遇した。
 パウロさんは「バンは3台あったはずなのに、1台しか残っていなかった。1人の女の子が地面に横たわり、足を半分血まみれにして泣いていた。彼女と一緒にいたもう1人の女の子も泣いていて、そばにいた2人の運転手は怯えた表情を浮かべていた」と振り返った。
 何が起こったかというと、一行が観光している間に強盗集団が車に乗り込み、運転手を縛って車内にあった物品を盗んだ。現場にいた女性の1人が、強盗にパスポートを奪われまいと抵抗した結果、銃で撃たれ、さらに犯人らが1台のバンを盗んで逃げ去る際、その女性の足を轢いたのだという。
 犯人らが逃げ去り、負傷した女性に応急処置を施した後、一行は難しい決断に迫られた。アンドレッサさんは「別の観光会社や住民が現れるまで砂漠で待機するか、それとも助けを求めて歩くか。その二択しかなかった」と語った。
 一行は二手に分かれ、一方は携帯電話の電波を見つける目的で一方向に歩き、他方は道路に出る目的で反対方向に歩いた。アンドレッサさんは「助けを見つけることができれば、それはもう一方の救助につながる」と説明した。
 パウロさんによれば主な恐怖は二点。一つは襲撃者が戻ってきて他の物品を奪うこと、もう一つは夜になって気温が急激に下がることだった。砂漠では夜間、零下に達することがある。5時間歩き続け、日没まであと20分という時、一行はようやく1台の車を見つけた。最初は、強盗団が再び戻ってきたのかと身構えたが、その車は一行に近づき、救助のために送られてきたのだと告げた。
 パウロさんは「敵か味方か? 5時間ぶりに現れたのがその車だけだったので、困惑したよ。みんなネアンデルタール人のように石を手に持ち、戦闘態勢だった。でも車から降りてきたのが3人のおじいさんで、『ガイドから通知を受けて救助に駆けつけた』と言われた時は肩の荷が一気に降りたよ」と振り返った。
 この事件にもかかわらず、二人はペルーでは楽しい時間を過ごしたと言う。アンドレッサさんは「この体験は、20日間の旅程の中での一つの出来事にすぎない。ペルーでは素晴らしいことをたくさん経験したし、そこで友達もできた」と強調した。

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