ブラジルの病院で初めて導入された複合現実メガネ(óculos de realidade mista)は、肺腫瘍の摘出手術において画期的な役割を果たしている。この技術は、医師が手術中に患者のデータを3次元で視覚化し、人体へのダメージを最小限に抑え、手術時間を短縮することが可能となった。手術中にリアルタイムで腫瘍の奥行きや周囲の肺組織を観察でき、手術の安全性が向上したという。今後は他の肺疾患治療にも応用が期待されていると6月27日付CNNブラジル(1)が報じた。
この技術は米国とカナダの医師の協力のもと、5月11日に首都ブラジリアのシリオ・リバネス病院肺腫瘍摘出手術で初使用された。3時間に及ぶ手術は成功し、65歳男性患者は退院、現在は自宅で療養中だという。
これは「ロボット支援下肺切除術」と呼ばれる方法で、複合現実メガネを使用することで様々な情報源からのデータを統合し、手術中の医師に3次元で提供できる。デジタル画像は個別化された患者情報に基づいて、外科医の視野内に投影される。
この技術により、腫瘍の奥行きを認識することができ、患者の肺の構造と腫瘍が分離され、2次元の画面では視覚化が難しい細部まで描出される。これにより、正しい症例判断と手術方法の決定をサポートし、手術の時間短縮と高精度化を実現した。
「ロボット支援下肺切除術」は、臓器の大部分を温存したまま肺の一部を切除する低侵襲手術の一種。この手術は、初期の肺癌の治療として世界の主要施設で最近標準的に行われるようになった。肺気腫、小児の肺奇形、気管支拡張症などの他の良性肺疾患の治療にも使用できるという。
複合現実メガネの使用により、医師たちは肺の機能を損なうことなく、腫瘍の影響を受けた肺の一部のみを切除できる。手術チームを率いたウンベルト・アウヴェス・デ・オリヴェイラ医師は、「この技術により、患者の解剖学的構造をより正確に把握することができ、より安全に、より少ない出血、より低い合併症リスクで手術を行うことが可能になった」と説明した。
同院イノベーション・センターのマネージャーを務めるコンラード・トラモンチーニ氏は、「この取り組みは、患者の生活を向上させ、効率と臨床転帰を改善できるイノベーションだ。これにより手術方法が革新され、全国の何千人もの患者に恩恵をもたらす可能性がある」と強調した。