人権市民権省の恩赦(アネスチア)委員会(エネア・アルメイダ委員長)は25日午後2時からブラジリアの同省講堂で、戦中戦後の日本移民コミュニティ迫害に対する政府謝罪の審議を行い12対0で可決、同委員長はその場で謝罪した。当日はサンパウロからブラジル沖縄県人会(高良律正会長)が呼びかけたバスツアー参加者約60人に加え、サンパウロ市から20人以上が飛行機で参加。首都からも日系人らが出席し、講堂は約100人の満員となった。沖縄以外の県人を代表して、ブラジル都道府県人会連合会の谷口ジョゼ会長も駆け付けた。
審議にはシルビオ・デ・アルメイダ人権相、アレシャンドレ・パジーリャ渉外室長官も出席。パウロ・テイシェイラ家族農相の日系人妻も姿を見せるなど、異例の注目を集めていることがうかがわれた。
最初にバンダ・ダビ・フェルナンデス・デ・オリベイラ評議員が報告官となって案件の説明をし、自分は謝罪に賛成であると賛成票を投じた。
その後、この要請の発起人である奥原マリオ純さんが、「サントス強制退去事件の続きとして勝ち負け抗争が起きた。今回、私たちは政治の大きな間違いを正す機会を得た。このような人種による差別は起きてはいけない。教育を通じて再発を防がねばならない。間違いを認め、ぜひ謝罪をお願いしたい」と政府謝罪が必要な理由を訴えた。続いて、父がアンシェッタ島送りになったサンパウロ州ツッパン在住の山内アキラさんの証言動画が5分ほど流された。
島袋栄喜ブラジル沖縄県人会元会長は「サントス強制退去事件から80年以上が経過している今日、6500余名の先人たちの名誉回復が急務となっています。まだ生存者が健在であるうちに実現してほしいのです。私たちが切実に望んでいるのは、この恐ろしい歴史的不正義を糾し、日本人移民の正義を回復することです。私たちはまだ生存している数少ない方々のために、政府に誤りを認めて謝罪してほしい」と語った。
続いて、サントス事件の被害者子孫である比嘉玉城アナマリアさんから「連邦政府に対して戦時下及び戦後の日本移民への人権侵害について謝罪を要求するこの歴史的瞬間に参加できることは、とてもうれしい。私の先祖、両親、祖父母、そして、この悲劇的な時代を生きたすべての人々の名誉を回復し、その尊厳に敬意を表することは必要だ。謝罪をしてもらえれば、天国にいる先祖の皆さまはきっと感謝すると思います」と代弁した。
さらにブラジル沖縄県人移民研究塾『群星』編集長の宮城あきらさんは「今日のブラジル連邦政府に、過去の戦時下の政府による未曾有の差別的人権迫害の過ちを謝罪してほしい。この謝罪は人類史共通の心理に立脚した英断であり、高い社会的評価が与えられるものと確信します。ウクライナ戦争、ガザ戦乱に揺れる現代世界の危機にあって、今回の連邦政府の判断は、平和と安寧を願う人々にとって大きな歴史的・社会的意義を有するものと確信します」と述べた。
これを受けて計12人の評議員が順々にそれぞれの評決を発表し、その理由を説明した。その結果、12対0になり、謝罪が決まった。
謝罪決定後、アルメイダ委員長は宮城氏を犠牲者の代弁者として謝罪のメッセージを述べた。続けて全員が起立し、亡くなった先亡者に1分間の黙とうをささげた。最後に若手5人の三線などによる演奏が行われた。犠牲者を悼むように「てぃんさぐぬ花」が静かに議場に響き、続けて「島人ぬ宝」が演奏されると、参加者らは今日の喜びを天に伝えるかのように合唱した。