50円のボードからメダリストに=祖母の誕生日に歴史刻む3世

アウグスト・アキオ(Foto:Luiza Moraes/COB)
アウグスト・アキオ(Foto:Luiza Moraes/COB)

 日系3世のスケーター、アウグスト・アキオ(23歳)がパリ五輪スケートボード男子パークで銅を獲得し、歴史に名を刻んだ。パーク種目では東京大会でペドロ・バロスが獲得した銀に続き、ブラジル人選手2個目のメダルとなり、新世代スケーターに更なるインスピレーションを与えている。メダルを獲得した7日は、偶然にも亡き祖母の誕生日で、家族にとり「最高のプレゼント」になったと7日付グローボ・エスポルテなど(1)(2)(3)が報じた。
 「ジャピーニャ(親しみや愛情が込められた〝日本人〟の呼び名)」として親しまれるアキオは、パラナ州クリチバ市出身。彼が7歳の時に初めて手にしたスケートボードの価格は、たったの1・99レアル(約50円)。そのクリスマスプレゼントが彼の人生を変えた。
 アキオは11歳の頃からスケートボード界で頭角を表し、初めて大きな結果を出したのは2019年にバルセロナで開催されたバート種目(垂直に近い傾斜のあるランプやコースを使用したスケートボードのスタイル)の世界選手権で銅を獲得した時だった。2022年のパーク種目の世界選手権では、アキオはシャールジャ(アラブ首長国連邦)とブエノス・アイレス(亜国)のステージで2位になった。昨年10月には汎米競技大会で銀を獲得し、その後ローマで行われた2023年の世界選手権では5位入賞を果たした。
 アキオはスケートボードを人生の哲学と考え、「貧困や苦難を知らない者は、美しさを同じ目で見ることができない」というモットーを掲げている。「僕は練習に体を使うと同時に、心も使う。これが僕の自己ケア、自己管理の瞬間なんだ」と語っている。
 彼は3年前からジャグリングにも取り組む。これはトレーニング中に股関節を負傷し、スケートから離れていた期間中のメンタルヘルスの一環だった。不安を軽減し、集中力を高めるのに役立ち、今や「ジャグリングは僕の一部だ」というほどのめり込み、どこへ行くにもクラブ(ボウリングのピンのような形の道具)を持ち歩く。パリ大会でもカメラの前でその腕前を披露し、メダルの獲得を祝った。
 母親のシルヴァナさんは「アキオは非常に内気な子供でした。彼が現在持っている自信はすべてスケートのおかげ。スケートは彼にとっても、私たち家族にとっても多くの良いものをもたらしてくれた」と語った。
 アキオの祖父、高橋普美雄さんは10代でブラジル移住した子供移民だ。鍼灸の先駆者で、ロナウジーニョやフレッジ、アルゼンチンのメッシや英国のベッカムなど多くのプロサッカー選手の治療をした。母シルヴァナさんも同じ道を歩み、アキオがスケートで怪我をした時は鍼灸治療で支えた。「祖父や母が鍼灸で支えてくれなかったら、ここまで来れなかった。父も兄も僕のスケートへの愛を信じ、応援してくれた」と家族の支えに感謝した。
 メダルを獲得した7日は、亡き祖母ユリコさんの誕生日で、家族にとって二重の喜びとなった。ユリコさんは1991年6月に49歳の若さで亡くなっている。普美雄さんは「今日は私の亡き妻の誕生日だ。私にとって最高のプレゼントをもらった。アキオをとても誇りに思っている。これ以上の言葉はない」と感慨深く語った。

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