中谷駐パラグアイ全権大使に聞く=知られざる〝超〟親日国の魅力=≪下≫=相思相愛の長い歴史

「日本が初めて物語」

 「パラグアイには『日本が初めて物語』がある」という中谷大使。
 まず、同国が1919年11月17日にアジアの国で初めて外交関係を樹立したのが日本である。
 そして、パラグアイの大豆栽培の特徴は全国的な不耕起栽培方式で、イグアス移住地の日本人移民が1982年に始めたものである。その効率性と生産力の高さによりパラグアイ全土に広がり、イグアス移住地は政府から「パラグアイ不耕起栽培発祥の地」として認定されている。
 パラグアイ中銀のデータによると、同国の主要産業は農牧業(大豆と牛肉)と製造業(自動車部品など)、主要輸出品目は大豆(大豆粉、大豆油を含む)、牛肉、電力である。
 日本人移民のもたらした技術によりパラグアイが大豆で外貨収入を得られるようになり、同国経済へ果たした役割は大きい。
 また、日本人移民は養鶏(卵)でもパラグアイの発展に大きく寄与し、アスンシオン市内には初めて母子保健病院が日本の支援によって設立された。

世界の主要牛肉生産国パラグアイ

 牛肉はパラグアイの主要輸出品目であり、2023年8月に就任した同国のサンティアゴ・ペニャ大統領は、同国経済の柱の一つとして畜牛部門に高い関心を寄せている。
 2023年9月13日に米国農務省(USDA)が発表したデータによると、2024年の牛肉生産量は56万5千トン、輸出量は44万5千トンと、輸出量は2022年に次ぐ過去2番目の高記録で、国内消費量は13万2千トンと予想されている。
 ウルグアイ産牛肉の日本への輸出は解禁されたが、現在、アルゼンチンやパラグアイからも日本への輸出の審査が進められている。
 「放牧で育つパラグアイの牛肉はエサも自然で、肉に味があって塩胡椒だけで十分おいしい」という中谷大使。日本がパラグアイ産牛肉を輸入することについて、「パラグアイは国際社会の場で価値観を共有できる力強い同志国。ビジネスとしてだけでなく、お互いの関係性を深めるという意味も含まれてくる」と広い外交の絵の中で見る。

パラグアイのシルビオ・ペティロッシ国際空港

相思相愛の日本とパラグアイ

 2021年にはコロナ禍の中、日本の茂木外務大臣(当時)が初めてパラグアイを訪問して温かく迎えられ、2023年5月には林外務大臣(当時)が選挙当選5日後の就任前の大統領の私邸に招待された。今年5月には岸田総理が強行日程ながらアスンシオンを訪れペニャ大統領と会談し、「両国政府が相思相愛であることを確認できた」という。
 ざっくばらんでエネルギッシュな中谷大使は、「アスンシオンに来ていただければ皆さんとお会いします」と、経団連のグループなどが訪れた時も得意のネットワーキング力を生かして大統領にまで会えるように取り持ってきた。「世界各国で活躍する日系人が日本にルーツがあることに誇りを持てるためにも、日本本国がしっかりしなければならない」と、日本の代表大使ならではの着物姿で信念を語った。(終)

最新記事