在日日系ブラジル人の教育支援活動などを行う日本の特定非営利活動法人「ABCジャパン」(神奈川県横浜市鶴見区)の安富祖美智江理事長(56歳、マウアー出身二世)らが7日、編集部を訪れ、活動状況などについて語った。
神奈川県鶴見区は歴史的に沖縄ルーツの日系人が多く移住した地域。ABCジャパンは日系ブラジル人によって2000年に設立され、鶴見に根を張り、当事者である在日外国人が中心になって20年以上活動を続けてきた。
事業は非日系外国人を対象に、多言語を使用して、子どもから大人の悩みに応えるもので、教育・進学・就労などライフステージに合わせた幅広い支援を行っている。使っている言語は、日本語、ポルトガル語、スペイン語、英語、中国語、タガログ語(フィリピン語)の6言語。
特に、フリースクール、放課後学習支援教室、進学&キャリア支援など子どもたちの教育環境を保障してきた。加えて、自分のルーツ国の文化を学ぶ機会を子どもたちに提供し、自らに誇りを持って日本で暮らすことができるように後押ししている。
こうした環境で育ったABCジャパンの卒業生が現在、社会の担い手として活躍しており、子どもたちは先輩の姿を見て、自らが進む道のヒントにしているという。
当事者だからこそできる親身な包括的な支援が、住人の定住と次世代のステップアップを支えてきた。
ABCジャパンは街で開催される沖縄関係のイベントにも頻繁に参加し、「外国人」と「日本人」としてではなく、「沖縄」のルーツや「共に鶴見に暮らす住人(鶴見人)」という共通点で、地域にオープンな関係性を構築している。
在日外国人同士で殻に閉じこもるのではなく、自ら積極的に地域の中に入り、社会の担い手として活躍していこうとするABCジャパンの取り組みは、従来、多文化共生の取り組みに多く見られてきた「日本人が外国人を支援する」という関係性を越えるものとして注目を集める。
ABCジャパンは群馬に支部を立ち上げ、他地域での活躍も期待されている。
住人の人生に寄り添った切れ目ない長年の支援と、地域に溶け込み、協力者を増やしながら展開してきた同団体の取り組みが高く評価され、2023年には『国際交流基金地球市民賞』を受賞した。