アルゼンチン不安で困窮する在住ブラジル人=帰国やパラグアイ転住も検討

ハビエル・ミレイ・アルゼンチン大統領(Foto: Fórum Econômico Mundial/Ciaran McCrickard/Fotos Publicas)
ハビエル・ミレイ・アルゼンチン大統領(Foto: Fórum Econômico Mundial/Ciaran McCrickard/Fotos Publicas)

 アルゼンチンでは、ミレイ大統領の緊縮政策による急激な生活費の上昇、不動産市場の危機、通貨と為替の問題、社会的・政治的混乱などの不安定性を理由に人々が困窮し、アルゼンチン在住のブラジル人も帰国や他国転居を強いられていると20日BBCブラジル(1)が報じた。
 22歳の学生、ルーカス・ドス・アンジョスさんは2019年からアルゼンチンに住んでいるが、首都ブエノスアイレスの物価上昇を理由に、パラグアイのシウダー・デル・エステに移る決心をした。「ここでは食費を気にする必要はない。ずっと安いんだ」と説明する。
 アルゼンチン入国当時は300レアル相当だった家賃は、今年初めには2千レアルになった。彼はブラジルの私立大学に通う余裕がなかったためアルゼンチンに移り、医学を学んでいた。長年この国を悩ませてきたインフにもかかわらず、ブエノスアイレスの物価はブラジルよりも安かったとルーカスさんは言う。
 昨年12月にミレイ大統領が就任してから、この状況はさらに悪化したという。「すべてが値上がりしている。2レアル相当だった米が今では10レアル」と説明。月々の生活費は3千レアル以上になり、5年前にアルゼンチンで暮らし始めた600レアルをはるかに超えている。
 社会経済指標を分析するスカラブリーニ・オルティス研究によれば同国の昨年1月と12月を比較して、家賃は285%から309%の上昇に直面した。
 これは新型コロナウイルス感染症以来施行されていた法律が廃止されたからで、2020年に国議会で可決された家賃法は家賃値上げに制限を課し、契約期間を2年から3年に延長した。
 しかし、多くの物件所有者は売却を選ぶか、より利益の高い短期賃貸に切り替えた結果、不動産市場に危機が発生し、賃貸物件の供給が減少したのだという。わずかに空いていた物件の家賃は上がり、結果的に高く、数も少なかった。
 ミレイ政権下では家賃高騰に関する制限を撤廃するための必要緊急大統領令(DNU)が昨年12月に発布され、価格管理の他の措置も撤廃された。契約は自由に交渉できるようになり、物件所有者はドルでの請求も可能となった。
 これについてジェトゥリオ・ヴァルガス財団の専門家は、以前の法律では家賃の額がインフレに合わせて調整できず、その結果、物件所有者が不利益を被り、物件の供給が減少したとし「自由化されたことで物件所有者は市場価格に合わせた更新を求めており、それが価格の大幅な上昇を引き起こしている」と説明する。
 経済不況から家購入が難しくなり、賃貸が多くの家族にとって主要な選択肢となり、それも需要の増加と家賃の上昇を引き起こしているという。
 アマンダ・オリベイラさんも「アルゼンチンは無理だ」と嘆くブラジル人の一人だ。彼女は14年間ブエノスアイレスに在住し、アルゼンチンの医療免許を所持している。夫はアルゼンチン人であり、故郷リオよりも安い生活費のために戻るつもりはなかった。しかし、今年前半に生活費の高騰が現実となり、夫婦はブラジルに移住することを真剣に検討している。
 彼女によると家賃だけで270%以上上がった。40平方メートルのアパートが500レアルから1750レアルに上昇した。DNUの発表以降、保険料も急騰し、アマンダさんの場合、増加率は89%だった。「すべてが高くなってしまってどうにもならない」と苦言を呈した。彼女は現在、ブラジルの医療試験の準備を進めている。試験に合格すれば、年末までにブラジルに帰国する予定だという。

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