日毎叢書企画出版(前園博子代表)の『楽書倶楽部』第74号が15日に発行された。読みどころ満載のコラム47篇などが掲載された充実の160頁だ。その一部をここに紹介する。
「海外移住研と私」(秋吉功)では、著者が早稲田大学時代には移住研だったが南米とは関係のないことばかりしていたことや唯一関係あったのが南米進出企業のパネル展示で、日本特殊陶業を担当し、奇しくも後年、そこに務めることになった成り行きを説明。「人生に偶然はない。すべて必然」という言葉があるが、まさにそれを地で行く実話だ。
「サンパウロ三日間の一人旅」(大槻京子)では、ブラジル日本商工会議所での講演会のためにサンパウロに来た際の内幕が語られている。著者が住むアマゾン川中流のモンテアレグレからサンパウロ市までは車、船、飛行機を乗り継いで17時間もかかる。ほぼ外国のような距離だ。「現代文明から取り残されたアマゾンの村の風景には、緑の地獄という言葉が浮かび上がってくる」という生活だ。
だからサンパウロ市では「久しぶりに見る日本人の男性達のすっきりとしたスーツ姿がまぶしく、日本から仕事に来ている若い女性の歯切れのいい日本語、礼儀正しさ、気配りの良さなどに、ふだん忘れている懐かしい祖国の風に触れた感じがした」「サンパウロのオフィス街の近代的なビル群に圧倒され」たという。
アマゾン暮しの身ゆえに時に都会に旅行をして「この原始的でつまらない環境から身を開放し、気持ちを軽く穏やかにして再びこの地に戻ってくる」ことで心のバランスをとることの必要性を痛感したという。
「私の人生回顧録」(江越トミ)は、子供時代に体験した朝鮮動乱の壮絶な体験談だ。敵機が迫ってきているという情報が入り、汽車から下車。「その飛行機は斜めになって『バババーッ』と、焼いて行ってしまいました。私と義姉は毛布を被ってトイレの陰にいたので助かりました。その後はあたり一面に人の頭や手足、胴体などがバラバラになって転がっていました。また汽車の下に隠れていたのでしょう。頭から血がトクトクと出ている遺体もありました」という壮絶な記憶が綴られている。
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