3日付エル・パイス紙(1)によると、南米ベネズエラのニコラス・マドゥーロ大統領は2日、テレビ番組に出演し、クリスマスを10月1日に前倒しすると発表した。これは、検察局が対テロ関連の罪で野党候補のエドムンド・ゴンサレス・ウルティア氏逮捕を命じた数時間後のことであり、深刻な政治危機の中での出来事だった。
マドゥーロ大統領は「9月だというのにクリスマスの香りが漂っている。今年は皆さんへの感謝の気持ちを込めて、10月1日にクリスマスを前倒しすることを宣言する。クリスマスは平和と幸福、安全とともに全ての国民にやってくるのだ」と述べた。
クリスマスまでの数週間、マドゥーロ政権は地域支援や食品配布を強化するため、国民の不満を和らげる効果があると言われる。2020年にはクリスマスの開始を10月15日、翌21年には10月4日から開始していた。つまり、常套手段だ。
来年1月10日、マドゥーロ氏は第3期目の就任を予定している。この日は7月28日の選挙結果に基づく新しい政治サイクルが始まる日であるが、選挙管理委員会によって発表された結果に対して当局は投票詳細を提示していない。
マリア・コリーナ・マチャド氏とウルティア氏が率いる野党はこの数字を全面的に拒否し、証人や観察者がまとめた投票詳細で反証している。政治的・司法的な迫害にもかかわらず、反チャビスタ連合は反発を維持し、国際社会がマドゥーロ氏の新しい任期を承認しないと確信している。その中でウルティア氏逮捕が命じられた。
ブラジル政府はウルティア氏逮捕を「容認できない」「非常に悪い兆候」だと評価しており、隣国の緊張の高まりに対する懸念を示す公式文書の発表を検討中だと3日付CNNブラジル(2)は報じた。
ブラジル政府は、マドゥーロ政権の権威主義的な動きに懸念を示しているが、大統領府と外務省は対話を維持しつつ、ベネズエラを国際的に孤立させることや、対話を完全に断絶することは避けたいという「ジレンマ」にも直面。ブラジルはマドゥーロ勝利を認めず、選挙結果の開示を求める立場を取っている。だがベネズエラを独裁政権と批難することや、ウルティア氏を正当な大統領として扱うことは考えていない。
ルーラ大統領の側近は、マドゥーロ政権との関係を維持する理由として以下の3点を挙げている。
まず、ブラジルとコロンビアがベネズエラと広大な国境を接しており、移民流入や地政学的な緊張がブラジルにも影響を及ぼす可能性がある。ベネズエラ政府から追われている6人の野党指導者が避難しているアルゼンチン大使館が、現在ブラジル管理下にあり、これら市民を保護する責任がある点も重要だ。
最後に、交渉による解決の可能性がわずかでも存在する限り、マドゥーロ氏との対話を保持することは将来的に有用であり、状況がさらに悪化した際には、反対派の権利を守るためにブラジルは重要な役割を果たす可能性があるという。
ただし現在、大統領府や外務省内では、マドゥーロ氏は交渉に応じる意向を持たず、側近の後ろ盾を得て政権にとどまるつもりだとの認識が広がっている。