ブラジル中銀が開発したデジタル通貨「Drex」の正式導入に向け、新たな試験段階に移行した。4日付ヴァロール(1)によると、同行は有価証券取引委員会(CVM)と選定した13件の使用事例において、新機能の開発に向けたテストの第2段階に進むと発表した。Drex導入プロジェクトは、分散型台帳技術(DLT)を用いてレアル通貨および金融システムにおける特定の資産をトークン化(機密情報などを扱う際、元の情報を直接使用せず、代わりに解読不能な代替情報に変換する仕組み)するためのインフラを構築することを目指している。
選ばれた13件の使用事例は、債権譲渡、証券預金証書を担保とする融資、国債を担保とする融資、貿易金融、外国為替市場の最適化、国債取引用の流動性プール、銀行信用証書での取引、農業関連資産取引、公共ネットワークでの資産取引、自動車取引、カーボンクレジットを用いた脱炭素化取引、社債取引、不動産取引だ。
デジタル通貨導入プロジェクトは他の国々、とりわけBRICS加盟諸国でも進展しており、中国で実証実験段階に入っている「デジタル人民元」はもちろん、インド中銀発行のデジタル通貨「eルピー」も、段階的な導入を経て500万人のユーザーに達し、同国のデジタル通貨プロジェクトが大規模に実施中であることを示していると3日付ヴァロール(2)が報じた。
インドの実験環境(サンドボックス)は2020年12月に開始され、即時決済システム「統一支払いインターフェース(UPI)」との統合がイエス銀行を通じて行われた。
デジタル通貨やブロックチェーン技術を利用した金融サービスを提供するトランスフェロ社の収益部門のディレクター、ジュリアナ・フェリッペ氏は、インドとブラジルは新技術をいち早く採用する国という共通点があると言い、「インドは段階的、ブラジルは安全を確保した上で一般開放したいと考えている。この種のプロジェクトでは安全とプライバシーが非常に重要だ」と評価した。
デジタル通貨が内部でテストされる一方で、国際的な支払いに使用される可能性についての憶測は、2023年にブラジル政府がメルコスル共通通貨の可能性について言及した際に浮上した。この問題はその後沈静化しているが、地政学的な要因は国境を越えた取引に対する暗号通貨の採用を促進し続けている。
7月にはロシアが国内での暗号通貨の合法化を承認し、8月にはこの種の取引のための「実験的採用」を開始した。これは、ウクライナ戦争に対する制裁を回避することを目的としている。
トランスフェロ社の最高経営責任者(CEO)マルリソン・シルヴァ氏は、この動きは後戻りできない道だと述べ、「ロシアは銀行が取引を行わないと言ったからといって、肥料の取引や輸入を止めるわけではない。どの国でも暗号資産で取引が行われている」とコメント。
しかし、デジタル通貨には依然として暗号通貨コミュニティ、特に「ビットコインマキシマリスト」と呼ばれるビットコイン支持者からの強い抵抗が存在しており、彼らはデジタル通貨が中央集権的な国家管理をもたらし、暗号資産の持つ自由な特性を損なうと考え、これを危険視している。