ボルソナロ前大統領が参加する政治集会が、独立記念日の7日午後にサンパウロ市パウリスタ大通りのMASP前を中心に行われた。街宣車から演説される主張は「昨年1月8日の三権施設襲撃事件の実行犯への恩赦」「アレシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事の罷免」「言論の自由と投票システムの透明化」だった。特にボルソナロ派インフルエンサーのXアカウント停止を命じたうえ、それに応じなかったX自体にも停止命令を出したモラエス判事の罷免が強く訴えられていた。
8月30日付のBBCブラジル記事によれば、現在Xへのアクセスをブロックしている国は、中国、イラン、北朝鮮、ロシア、トルクメニスタン、ミャンマーなど独裁国家が多いという。
主催者側は「10区画に渡って参加者が埋めた」というが、実際には「2区画」が中心であとはパラパラという感じだった。この集会にはピーク時で4万5400人が集まったとサンパウロ大学の「デジタル環境における政治討論のモニター」が発表した。ブラジル国旗色のTシャツを着た50歳以上の白人の中産階級風の参加者が多かった。
午後2時過ぎから演説が始まり、ボルソナロ派の若手急先鋒のニコラス・フェレイラ連邦下議、マギノ・マルタ上議らに続き、タルシジオ・デ・フレイタス・サンパウロ州知事、前大統領を熱烈に支持するシラス・マラファイア牧師、最後にボルソナロ前大統領が演説した。モラエス判事に言及するたびに「Fora Xandao!(シャンドンを外に(モラエス判事を罷免に)」という大合唱が繰り返し観衆から起きた。
道端で売られているTシャツやタオル、壁などの張り紙などを見る限り、ヌーネス市長に関連したものはほとんどなく、圧倒的にボルソナロ、それとの関係を強く訴えるマルサル、さらにイーロン・マスクの姿ばかりだった。
日本のポップカルチャー現象であるバーチャル・アイドル「初音ミク」が数年前から、複数のブラジル人アーティストによってショートパンツ、サンダル、グアラナを手に持つブラジル版が描かれていた。特にERINさんがXで今年前半に発表したものが大人気となりバズったため、それが見られなくなったことに対する抗議として、牢屋に入っている初音ミクを描いたプラカードも掲げられていたようだ。
一番過激な発言が行われたニコラス連邦下議やマラファイア牧師の演説時は盛り上がりを見せたが、前大統領は比較的抑え目な言葉遣いに終始し、それほど聴衆は興奮した様子にならなかった。
それでも、前大統領は3権施設襲撃事件の実行犯恩赦に加え、「上院の働きにより、独裁者アレシャンドレ・デ・モラエスに歯止めをかけることを願う」「この国の将来は、選挙高裁が決めるのでなく、国民が選ぶもの。私への告発は物質的な証拠がないものばかり。議会での取り組みにより、私は次回の大統領選挙には出られるようになるはずだ」などの要旨で演説した。
全体的に比較的落ち着いた雰囲気の中で集会は行われ、午後4時半ごろに前大統領の演説が終わると、潮が引くように聴衆は三々五々、家路についた。監視するように終始、5台以上のドローンが集会の上空を飛び回っていた。