あしなが育英会=「遺児でも希望持てる」=奨学生がブラジル研修報告

笑顔で色紙を持つ太田さん(中央)

 病気や災害、事故で親を亡くした子を支援する日本の財団法人「あしなが育英会」の奨学生が8月21日から9月12日までサンパウロ市の日本文化広報施設「ジャパンハウス」で研修を行った。研修最終日の12日には、奨学生の太田朱音さん(20歳、兵庫)による報告会が同施設で行われた。あしながブラジル(二宮正人会長)共催。
 報告会には二宮会長、在サンパウロ日本国総領事館の市村雅副総領事、京都大学渡邊文隆博士、フォトジャーナリストの渋谷敦志さんらが出席した。
 太田さんは高校2年生の時、母親がくも膜下出血で突然亡くなり、翌年から3姉妹で生活を始めた。現在は大阪音楽大学ミュージックコミュニケーションコースに進学し、音楽イベントを中心とした文化企画について学んでいる。
 ジャパンハウスでは、各部署や展示現場に配属され、研修を行った。太田さんは「試行錯誤を繰り返しながら仕事をする皆さんの姿にとても親近感を覚えました。また、何の施設か分からずにやって来たという来館者の多さにびっくりしました」と研修体験を振り返り、「恩送り」や「志」といった日本の概念を普及する企画を行ってほしいとの提案を行った。

プレゼンテーションをする太田さん

 その後、「青春(アオハル)」を題材にした発表を行い、日本で青春は若い一瞬のことを指すが、勉強など自分のタイミングで好きなことを始めるブラジル人を見て、青春は若者だけのものじゃないと実感したと語った。
 滞伯中は聖州にあるサンタマルセリーナ大学を訪問し、同世代の音楽を学ぶブラジル人と交流を深め、美味しいブラジル料理や、ブラジル人の温かさに触れることができ、充実の3週間だったと笑顔で総括し、「大学に通い、異国の地を体験するという挑戦が私にもできました。遺児という境遇から夢を諦めてしまっている後輩に私の経験を伝え、希望を持ってほしいと思います」と語り、関係者へ感謝を述べて発表を締めくくった。
 ブラジルあしながでは、ブラジル人を日本に送るプログラムも行っている。来年度候補の募集などについては同団体サイト(https://www.ashinagabrasil.org)から確認できる。

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