「あの麻生太郎さんの親戚ですか?」 日本では、ほとんど聞かれたことのないこの質問をブラジルに来てから何回聞かれたことでしょう。
私は南米最大都市サンパウロのリベルダーデという世界最大の東洋人街の一角にある、日本語新聞を発行する「ブラジル日報協会」にマーケティング分野協力で派遣されている麻生公子です。
なんと、ブラジルで、日本語の、しかも紙の新聞が、週5回も発行されているのです。
「ブラジル日報」の印刷版の主な読者は日本移民、駐在員の方たちでウェブ版は日本からのアクセスが90%以上と圧倒的に多いですが、有料会員はブラジル在住の方が多いです。
私の仕事は「ブラジル日報」の存在を広く知ってもらうことと、印刷版の読者が減っていく中ウェブ版の読者をいかに増やすかということを考え実行していくことです。
外務省統計では世界には500万人の日系人がいて、そのうち270万人がブラジル在住と言われています。私が住んでいるリベルダーデには日本食レストラン、日本雑貨店が立ち並び、多くの日本移民、日本人が住んでいます。アニメ・マンガをはじめとした日本文化がブラジルでは大人気でリベルダーデも観光地となっており、週末ともなると原宿の竹下通りぐらいの混雑ぶりです。
私は元々きものを着ることが好きで茶道も習っていたのですが、こちらに来てブラジルではむしろ日本より日本文化が大切に守られているのではないかと感じます。ほとんど毎週末ブラジルのどこかで日本文化関連のイベントが開かれ、ブラジルで初めて見たり、体験した日本文化や食もたくさんあります。「わんこそば」大会、秋田の「竿灯」演技、沖縄の琉球国太鼓と三線、「ヒージャー汁」など。
ブラジルでは世界で唯一、47都道府県の「県人会」が存在しています。毎年7月にはその都道府県人会連合会(県連)の「日本祭り」が開催され、3日間で20万近くもの人が来場します。「日本祭り」では各県の名物料理が出され、ブラジル人にも大人気です。ブラジル日報協会でもブースを出し、購読者勧誘のほか、きもの着付け体験をしてブラジル人の方にとても喜んでもらえました。
日本から一番遠い国ブラジルでこんなに日本の文化が大事にされているなんて、こちらに住むまで知りませんでした。これにはブラジル日本移民の歴史が深く関係しています。日本移民の日本・日本文化に対する愛が片思いで、もっと日本に振り向いてほしい、ブラジルに住んでいる日本移民や日本移民がブラジルに果たしてきた役割、ブラジルという国のことをもっと知ってもらいたいという彼らの気持ちをひしひしと感じます。
今年5月に岸田首相がブラジルを訪問され、日系社会から大歓迎を受けました。私もブラジル日報SNSで情報発信をしました。岸田首相は「今後3年間で1千人の中南米日系社会交流新プログラム」の実施を決定しました。これで少しでもブラジルと日本の距離が縮まるといいな、と思います。
麻生太郎副総理は、2007年の外務大臣時代や日本移民百周年の節目の年を含め、歴代大物政治家の中で最も多くブラジルに来訪しており、日本移民にとってブラジルを忘れていない政治家として認知されているようです。どうりで「あの麻生太郎さんの…」と聞かれるわけです。