商議所、環境保全への理解促進図る=『アマゾン、新たな水俣?』の監督招き=映画支援での税控除方も指南

映画『アマゾン、新たな水俣?』を紹介するジョルジ・ボダンツキー監督

 日本において戦後の高度経済成長期に発生した水俣病と同様の問題が、60年以上たった今、ブラジルのアマゾンで発生している。その実話に基づいたドキュメンタリー映画『Amazônia, a Nova Minamata?(アマゾン、新たな水俣?)』が、ブラジル有数の映画監督、脚本家、写真家であるジョルジ・ボダンツキー監督により制作された。ブラジル日本商工会議所の環境委員会は9月26日、この新作映画を通じて環境保全と環境対策の重要性の理解を深めるために、同監督とプロデューサーチームOcean Films及び映画配給会社O2PLAY社のメンバーを迎え、映画の紹介とAncine(ブラジル国立映画庁)が承認した映画およびオーディオビジュアル制作プロジェクトに資金を提供した金額を所得税から控除する方法の説明を行った。映画は完成しており、幅広く一般公開するにあたって資金を集めている。

 ボダンツキー氏は1942年、サンパウロ市生まれ。ブラジリア大学(建築学科)在学中に軍事クーデター(1965)による大学閉鎖に伴い、ドイツに渡りウルム映画製作研究所を卒業した。1974年に映画監督として『イラセマ―ウマ・トランサ・アマゾニカ』でデビューし、森林破壊というそれまで不明瞭だった問題を告発し、ドキュメンタリー映画の画期的な作品として数多くの国際的な賞を受賞した。デビュー以降、環境問題に専念し、ブラジル映画アカデミーが推進する2022年ブラジル映画グランプリでは、同監督によるシリーズ『Transamazônica Uma Estrada Para o Passado(トランスアマゾニカ 過去への道)』が、最優秀ドキュメンタリーシリーズ賞を受賞した。
 『アマゾン、新たな水俣?』では、先祖伝来の土地に対する金採掘で破壊的な影響を食い止めようとするムンドゥルク族の物語を追うとともに、水銀汚染に起因する水俣病がアマゾン全域の住民をどのように脅かしているかを明らかにしている。監督は2016年にアマゾンを訪れた際、先住民の子どもに車いすの需要が急激に高まっており、それが30年以上前から金採掘のために川に流されてきた水銀の影響であることを知った。
 「今のアマゾンで半世紀以上前の日本と同様の水銀中毒が引き起こされていたことを知り、大きな衝撃を受けた」と語る監督は、日本で身をもって訴え続ける胎児性水俣病患者の坂本しのぶさんにも映画に参加してほしいと思い、国立水俣病総合研究センターと情報を共有して、日本から送られた坂本さんや水俣病が繰り返されないようにと活動する人々の動画も織り交ぜた。12分ほどのショートビデオも編集し、日本の様子をムンドゥルク族の人々に見せると、水銀の怖さとともに、今日では水俣産の魚が問題なく食べられるほど水がきれいになった事が大きな希望のメッセージとなったと語った。

会場の様子

 同映画は環境対策の重要性を世界に繋ぐドキュメンタリー映画としてAncineが承認しており、法人はその制作プロジェクトに対する資金提供で税制恩典が受けられる。O2PLAY社のパウロ・バルセーロCEOはその説明の中で、「映画館での一般公開と合わせて、SNSやポッドキャストでもキャンペーンを行い、一つの運動に変えたい。アマゾンと水俣を繋ぎ、世界で同じ過ちが繰り返されないために一人でも多くの人にこのメッセージを届けたい」と力を込めた。

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