「どうした?怖いか」ニヤッと笑った。
こいつ狂人か。……本当にピストルが上手いのだろうか。もし下手クソだったら、俺は殺されるか、こいつみたいに片輪になるそう思ったが仕方ない。
「いや」
と首を振った。彼は指示された木の下に立った。振りむいて葉巻をかかげると、オットーはピタリとピストルを運平の胸に向けた。一瞬、運平はハッとしたがオットーは平気な顔で銃口をそろそろ移動させた。
タン!
乾いた音が炸裂して、手の葉巻がすっ飛んだ。
「ウハハハ……」
腹をゆすって大男は哄笑した。
「お前はチビだが勇気がある。大低の奴は俺がピストルを持って睨むと震え上る。ウハハハ、仲々気に入った奴だ」
オットーはドシンと運平の肩を叩いた。酷い野郎だと運平は思ったが、済んでしまえば憎めなかった。
「鉄道の沿線はもっと値が上るから売れないが、奥へ入った処なら好きなだけ売ってやろう」運平はホッとした。
「どのくらい買う?」
「それがまだ分らない」
「分らないで買いに来たのか」
今度はオットーが呆れ顔になった。
「仲間と相談して、また来る」
「そうか。必らず戻って来いよ」
オットーはずっと親しみを見せた。
……帰り路で案内の若者が、
「あなたは凄い」と言った。
「この辺でオットーさんと対等に話せる人はいない。みんな怖がっている」
「そうか」
運平は笑っただけだった。
六年も多くの人を使っていたから、尊大で傲慢な大男とも、傍から見ると対等に相手できるようになっていたらしかった。
二カ月振りでグァタパラに帰ると、運平は人を集めて入植計画を発表した。自分たちが地主になって開拓をするのだ。希望者は申し込むように。土地代は測量費込みで一アルケール五〇ミルだ。安かった。草除り仕事をしても一月七十五ミルになる。食費に十五ミル引いて、五〇ミル残る。つまり毎月二・五町歩も買える。四人家族なら十町歩買える。夢みたいに安かった。夢みたいだ。毎月の稼ぎで十町歩ずつ買えるなんて……。
「希望者は欲しいだけの土地を申し込め、金がなくても頭金さえ都合すればいい」と運平は言った。
ワッと人々は湧きたった。