サンパウロ市ジャルジン・パウリスタ区のイタリア料理の老舗「Lellis」。ブラジルの著名人も数多く訪れる有名店だ。料理はもちろん、ワインや内装に至るまでこだわり抜いた同店の魅力を探った。
取材に訪れたのは火曜日の昼時。店内は落ち着いた雰囲気で、会社員や家族連れが食事を楽しんでいた。
目を引いたのは、店内に飾られた無数のカリカチュア（風刺画）だ。ブラジル大手新聞フォーリャ紙の故アドラール・メンデスが手掛けた作品で、店内にはブラジルの著名人を描いた約８００枚が飾られている。
カリカチュアはオーナーのジョアン・ゴウベイアさんが、著名人が店を訪れるたびに写真を撮り、アドラールさんに送って描いてもらっていたという。店に飾られている作品以外にも約２００点あるという。千人以上の著名人が同店を訪れたということだ。２人は釣り仲間だったそうだ。
カリカチュアには、ブラジルで知らぬ者はいない有名二人組セルタネージョ歌手のシタオジーニョとショロロー（Chitãozinho & Xororó）などが描かれ、並んでいた。
オーナーのジョアンさんにレストランのこだわりを聞くと「衛生管理と食品の質」を挙げた。栄養士の指導の下、野菜や海鮮類の衛生管理を徹底。食材は品質が保証された生産地からのみ購入しており、生産から食卓に上るまでの工程がしっかりと管理されている。
料理のこだわりには「パスタとトマトソース」を挙げた。パスタはもちろん自家製で、イタリアから輸入した小麦粉を使用し、スパゲティやカッペレッティなど各品目を丁寧に作っている。
こだわりのトマトソースは、本場のイタリアからもシェフが学びに来るという。弱火でコトコト８時間煮たトマトソースは、材料のうまみすべてが溶け込んでいる。レシピは自ら開発し、「ブラジル一のトマトソースだと思うよ」と胸を張る。
ジョアンさんが「今日はとっておきのを出そう」と言って、テーブルに持ってきてくれたのは「ブラジル風バカリャウ」。大きなプレートに、トマトソースのかかったバカリャウ（干し鱈）と、バカリャウの出汁で作ったピロン（マンジオカ芋の粉を使ったペースト）、ポテトピューレが載っている。
まずはバカリャウとトマトソースから。バカリャウだけで１キロはありそうだ。バカリャウの身はふっくらとして厚く、こだわりのトマトソースと絡み合って、うま味が口の中で踊っているようだ。新鮮なエビのプリっとした触感も印象的だ。
バカリャウの出汁で作ったピロンはトロっと風味豊かな味わい。ポテトピューレには粉牛乳を使用しており、牛乳を使用したものより濃厚だ。
釣り好き、魚好きのオーナーだからこそ編み出せた特別料理だという。値段は３２９レアル。大人４人でも十分お腹いっぱいになる量だ。
同店の魅力は料理だけではない。約８千本の豊富なワインコレクションは圧巻だ。ワイン愛好家でもあるオーナー自らが世界のワイナリーを巡り、一つ一つの品質を確認したうえで販売している。値段は４０レアルから１万３５００レまで取り揃えている。
二階の一室がワインセラーとなっており、オーナーが購入したワインは、３日間保存してから提供するというこだわりも。オーナーのお勧めは土地質の良いチリ産ワインだという。
すっかりお腹も膨れたところで、お会計へ。同店ではブラジルでは珍しいチップ制を導入していた。チップは強制ではないが、チップの有無で客が満足のいく料理や接客を受けることが出来たかを可視化し、従業員がサービス意識を高めやすくするために実施しているという。
ちなみに、パスタの茹で具合は、基本的にはブラジル人好みの柔らかめで提供されるので、アルデンテを希望する場合は注文時に伝えること。
取材後、店を出てすぐに「次は何を食べようか、夜に来たら雰囲気も変わるだろうか」と楽しみに考えている自分がいた。雰囲気、料理、ワイン、目でも舌でも楽しむことができる同店。仕事仲間や家族と一緒に訪れてみてはいかがだろうか。
イタリア料理 Lellis
営業時間：
月曜日午前１１時３０分～午後３時、午後６時～午前１時
火～日曜日午前１１時３０分～午前１時
住所：
Alameda Campinas, 1615 – Jardim Paulista, São Paulo – SP, 01404-003
電話：（１１）３８８５・２６９８／（１１）３８８５・７４６１／（１１）９７２３８・３１７２
サイト:www.lellis.com
E-mail:lellis@lellis.com
