高圧線に触れて愛犬が感電死=泣く泣く遺体を路上放置

ラファエルさんとマリーナさん夫婦と愛犬バルト(Foto: Arquivo Pessoal)
ラファエルさんとマリーナさん夫婦と愛犬バルト(Foto: Arquivo Pessoal)

 サンパウロ市南部サントアマロ地区で12日(土)朝、飼い主夫婦と散歩していた犬が感電死する事件が発生した。この悲劇は、前日11日(金)午後に発生した暴風雨によって切れた送電線に触れたことが原因。さらなる感電の危険性から犬の遺体に触れることができず、約30時間路上に放置されたままとなった。13日付G1など(1)(2)が報じた。
 飼い主ラファエルさんとマリーナさん夫妻は、毎朝2匹の愛犬と近所を散歩するのが日課だった。この日も午前7時15分頃、10歳の愛犬バルトと散歩していた。道路には前日の暴風雨によって断裂した送電線が放置されており、それに触れてしまったバルトは感電し、即死した。
 ラファエルさんは「バルトは私たちの少し前を歩いていて、切れた電線を踏みつけてしまった。本当に一瞬の出来事でした。こんな瞬間を目にするなんて思ってもみませんでした。私たちは、バルトを救うために手を差し伸べたいという衝動を抑えなければなりませんでした。妻の手をしっかりと握り、強くそこに留まり続けました」と愛犬を失う痛みと絶望を語った。
 マリーナさんは「バルトはすぐに倒れ、太い電線にくっついたままで、私たちは触れることもできず、何もできずにいました。電線は路上の至る所で切れて広がっていました。この悲劇は誰にでも起こり得ることでした。現場は保育園の目の前でした。この日は子供の日(ブラジルでは10月12日)でしたが、イベントが無かったことが幸いでした。もし子どもに起こっていたらと考えるだけで恐ろしい」と説明した。
 夫婦は、事件直後に警察や消防にも連絡したが、電力供給企業Enelによって送電が切られるまで犬のそばに近づけないと告げられ、愛犬の遺体を路上に残さなければならないという、苦しい決断を強いられた。さらに、同社の対応が遅れたことも問題視された。
 ラファエル氏は「ついに13日午後12時15分頃に送電が切られ、私たちはバルトの遺体を移動することができ、弔うことができました」と述べた。さらに「バルトを1人残して帰宅しなければならなかった私たちの気持ちが分かるでしょうか。たとえ亡くなっていたとしても、彼は私たちにとってかけがえのない家族であり、彼を置いて帰ることがどれほど辛かったか想像できますか」と話した。
 彼はEnel社の対応の遅れに加え、電線の安全性の欠如についても非難し、高電圧ケーブルが断裂した場合には自動的に電源を切るための安全装置が必要であると主張。「Enelだけでなく、監視の不備については政府にも責任がある」と批判した。
 Enel社は、犬の死を悔やむ声明を発表し、家族に対して支援を提供する旨を伝えたが、現場に急行するのが遅れた理由については明らかにされなかった。
 11日に州都とその周辺市を襲った最大時速107kmの強風を受けて7人が死亡、大規模な停電が引き起こされ、14日午後2時現在でも40万戸が電気のない生活を強いられている。

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