第50回衆議院議員総選挙の在外公館投票が16日(水)午前9時半から、世界中の在外公館で始まった。今回の在外投票では初めての最高裁判所裁判官国民審査が行われ、令和6年10月参議院議員補欠選挙(岩手選挙区)も併せて実施されている。在サンパウロ総領事館に一番のりした森下浩さん(87歳、愛知県出身)ら3人に、在外投票や国民審査をした感想を聞いた。
オザスコ市との境に住む森下さんは午前6時に自宅を出発してバスに乗り、公共交通機関を乗り継いで9時過ぎに到着した。「在外投票が始まって以来、ほとんど来ている。一番乗りになったことも何回かある」と振り返り、「日本のことが心配。どの国も政治家が…。自民党支持だが、国を良くしてくれそうな人を選んだ」と語った。
匿名希望の駐在員男性(60代、横浜市出身)は「インドに駐在していた時にも在外公館投票していた。国民の義務だから当然だと思う」と投票に来た動機を説明。今の日本の政治状況に関しては「与野党間で本質的な議論が戦わされていない。ただし、戦後タブーだった防衛論議をようやく正面から議論されるようになったことは評価したい」と述べ、最高裁裁判官国民審査に関して「なんで今までできなかったのか不思議。でも日本の最高裁判事がどんな判断を下しているのか、名前だけ見てもよく分からない。最近のX禁止にしても、ブラジルの最高裁判事は顔が見えるが日本は…」と述べた。
やはり匿名希望の戦後移民男性(81歳、神奈川県出身)も「日本人だから日本の政治に参加すべきと思って1票を投じにきた。ほとんどの在外投票に参加してきた」と動機を述べ、日本の政治状況に関しては「採点すれば60点だ。与野党の議論が批判のための批判に終始している。もっと日本の将来ビジョンを具体的に語る、前向きな議論を中心にやってほしい」と見ている。
国民審査に関しては「6人の裁判官の名前だけ見ても何をした人か分からない。どんな判決を下した人なのかプロフィールを事前に知らせてほしい。その点、ブラジルの最高裁は分かりやすい。日本の最高裁はPRが足りない」との感想を述べた。さらに「日本の投票率は低すぎると思う。有権者の年齢を下げるより、ブラジルのように義務化したら国民の声がもっと正確に政界に反映される。真剣に検討してほしい」と提案した。
同館3階に設けられた投票所には最初の1時間で10人余りが訪れ、一人当たり40分程度かかっていた。山内隆弘領事部長(62歳、東京都出身)によれば2022年6月、前回の衆院選の在外投票では約270人が投票した。「前回は満期解散、今回は突然の解散だったので、選挙周知期間が短かった。それがどう影響するか?」と首をひねった。
2016年7月の第24回参議院通常選挙の折には、7月23日から10日間に渡って在外選挙が行われ、全伯在外選挙人登録者数約1万6千人中、7・4%に相当する1185人が投票していた。2000年に始まった在外投票制度だが、有権者高齢化を受け、パンデミック以降特に激減傾向にあるようだ。