チリ日系社会の成り立ちはブラジルやボリビアなどとは少し違った特徴を持つという。日本とチリの友好関係深化への貢献が認められ、今年の春の叙勲で日本政府から旭日小綬章を受章したチリ日系慈善協会の坂本パブロ会長(2世・66歳)にチリ日系社会について聞いた。
チリへの日本人移住は戦前から確認されているが、国家間の移民協定はこれまで結ばれておらず、チリに渡る日本人は個人渡航で専門的な職能を持つ男性が多かった。女性移住者は少なく、男性移住者はチリ人女性と家庭を築いていった。
第二次世界大戦が勃発すると、チリと日本は敵国同士に。そうした中で日本人移住者らは互いを支え合い、結束を強めていったという。
戦後、チリ日系慈善協会(Sociedad Japonesa de Beneficencia Nikkei-Chile)が設立され、現在、約3000人いるとされるチリ日系人の内、同協会には約300人が所属している。
坂本会長の父は1955年に、捕鯨師としてチリに移住し、チリ人女性と結婚。坂本会長はカルデイラ州で育ち、父から厳しい日本式教育を受けた。厳しい教育への反発から若いころは日本に対する興味を持てなかったという。その後、医薬品科学者となり、会社経営も行うようになると、日本という存在が今の自分を作っていることに気づいたという。
今回のCOPANIにはチリから5人が参加した。坂本会長は「参加者は5人だけでも皆エネルギーに溢れています。参加者の門馬ロザリオさんはジャーナリストとして活躍し、未来の会長候補。松原修さんは日本語が流暢でチリ日本間を股にかけて活躍しています」と笑顔で語る。
チリ参加者の中で唯一の青年世代の三宅健さん(27歳・2世)は日本人の父とチリ人の母を持つ。COPANIに参加して「改めて日系コミュニティーが美しいことに気づきました。チリに戻ったら仲間にも伝えて日系社会に対する意識を向上させていきたいです」と語った。
坂本会長はチリ日系社会の課題として、日本と関わる機会の少なさ、若年世代の参加率の低さを上げ、課題克服に向けた取り組みを進めていきたいと話した。(島田莉奈記者、つづく)