南北米大陸を跨ぐCOPANI=あなたの国の日系社会教えて=(8)パラグアイ唯一の英字メディア立ち上げ

栗田香織さん

 COPANIにボランティアとして参加したパラグアイ在住の栗田香織さん(27歳・3世)は、同国唯一の英字メディア「ザ・パラグアイ・タイムス」を立ち上げた若者として会場で注目を集めていた。
 香織さんはアスンシオンで生まれ、8歳から2年間は父親の仕事の関係で台湾に在住した。祖父のイグアス移住地引っ越しに伴い、香織さん家族も一緒に同地に移った。18歳までイグアス移住地で過ごし、「日本からの移住者の方に踊りなどを教えてもらい、イグアス移住地には楽しい思い出があります」と振り返る。
 大学進学のためアスンシオンに上京するも、試験は不合格。日本人が運営するメディア企業でアルバイトを始めた。アルバイト先の社長に「香織ちゃんは管理職に向いている」と言われたことをきっかけに経営に興味を持ち、改めて大学進学を志すようになった。
 そうした中、幼少期を過ごした台湾に戻ってみたいとの思いから半年間の語学留学を行った。ホンジュラス出身のクラスメイトが台湾での大学進学を目指していることを知り、自身も大学受験に挑戦。見事合格し、経営管理学を専攻した。
 学校生活も終盤となり、周りが就活をする中、香織さんは自分が何をやりたいかを具体的に見出せずにいた。企業インターンに参加すれば何か見つかるかもと考え、これまで接点のなかった日本社会での企業インターンを選んでみることにした。
 日本企業は海外からのインターン生の募集をあまり行わないが、外資系企業がマーケティング分野のインターン生を募集しており、800人中の6人に選ばれた。インターンでは、パラグアイでは主流ではないデータをもとにプロジェクトを進行する方法を学んだ。
 パラグアイ帰国後、起業をしたい思いはあったが、「仕事の経験がない自分が人を雇うのはどうだろうか」と思い、パラグアイ半周旅行の後、在パラグアイ日本国大使館で働いた。大使館内には、スペイン語のできる職員が少なく、スペイン語の記事を日本語に翻訳する業務を行った。その際に「パラグアイにどうして英語の記事がないのだろう」と疑問に思った。
 調べてみると、パラグアイではスペイン語による情報媒体も少なく、アスンシオンに図書館は2つしかなかった。書物は1800年代のものが多く、現代に出版された本の数は極端に少ない。パラグアイには読書などの「読む習慣」がないことがわかったという。
 パラグアイに関する英語情報の少なさに目をつけた香織さんは、パラグアイにどのくらいの外国人が住んでいるかを調べることにしたが、ネットにはその情報すらなかった。Facebookでパラグアイ在住外国人のノマドグループを見つけると、早速その集まりに足を運んだ。
 集まりではイギリス人のジェイクとインドネシア人のヴィリアのカップルと出会った。2人もパラグアイで何かビジネスができないかと考えていた。香織さんは2人にパラグアイにおける情報発信の疑問をぶつけるとジェイクは既にビジネスプランを持っていた。

ザ・パラグアイ・タイムス

 その後もジェイクと議論を重ね、今年の3月に「ザ・パラグアイ・タイムス」を創立した。「小さい行動でも世界に大きなインパクトを与える」をコンセプトに、読者が読んで幸せになれる記事を日々発信している。
 香織さんは11月3日の「インターナショナルサンドイッチデー」にちなみ、「地球をサンドイッチしよう」企画を準備中だ。パラグアイとその反対側に位置する台湾で地球をサンドイッチするというコンセプトのもと、両国の関係性などを紹介する。世界中の人が仲良くなれる情報を発信していきたいと語った。(島田莉奈記者、つづく)

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