特別寄稿=松原移住地の入植初期の思い出=柳生豊彦=(上)「やれこれがブラジルですかね」

1953年5月15日、ルイス号船中にて(朝日新聞より抜粋、柳生氏提供)

(※中村四郎氏論文『「松原移住地」・移住者たちの証言』より、同氏が1998年に実施したアンケート調査に対する柳生さんの回答全文を、中村さんの許可の元転載。柳生さんはすでに故人)

1953年5月15日、神戸港出港、知事見送り

 1953年5月15日神戸港にてインタオーションルイス号(約2万5千トン級の船)に我々移民(第一船発)乗船。見送る人も行く人も互いに別れを惜しみ、テープが切れるともう再び逢えるか逢えないかわからない。出航するはずが、15日夕方、和歌山県知事小野真次様が見送りに来てくださった。ずらりと並んだ二段ベッドに私と一緒に座りながら知事さんが目をやり、(とても狭いのう)とふとつぶやいたのを思い出す。

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