ジャーナリストの三山喬さん(たかし)が月刊誌『世界』12月号(岩波書店)で、7月25日にブラジリアであった連邦政府による戦争に関わる日本移民迫害への謝罪をテーマにした記事「ブラジル移民史の新章 謝罪請求運動、ふたつの水流」を発表した。
三山さんは朝日新聞記者を経て、20年ほど前にペルーを拠点に数年間、南米各地の日系社会を取材して回った現地通。彼からすると戦争前後の〝暗黒史〟を知らされずに育った世代が政府責任を追及する謝罪運動を始めたことは、《私には想像を超えた出来事に感じられた》という意外性から記事は始まる。
その動きは現地邦字紙「ニッケイ新聞」に加え、日本の映像作家・松林要樹がドキュメンタリー映画『オキナワ サントス』撮影を始め、沖縄県人会というマンモス団体がそこに加わったことで一気に加速した。そのきっかけになったのが、松林がサントス日本人会会館で強制立ち退き者名簿を見つけ、そのリストの約6割が沖縄系だと分かったことだった。
その前段階として、奥原マリオが、勝ち負け抗争時の1946年に脇山甚作殺害を図った実行犯の一人・日高徳一を主人公に、ドキュメンタリー映画『闇の一日』(2012年)を発表していた。その中で、勝ち負け抗争でアンシェッタ島送りになった全172人の収監者のうちの約140人は無実の人であったことも描いていた。奥原と沖縄県人会が連名で恩赦委員会に政府謝罪請求を始めた経緯が描かれる。
その中で奥原の言葉「僕の関心の中心はヴァルガス独裁政権時代の事件問題、日本移民迫害だ。それがあったから勝ち負けは起きた。戦争中に日本移民に起きたことを、ブラジルの歴史としてはっきりさせ、二度とあのようなことが起きないようにするのが目的」という言葉を紹介した。
三山は「ブラジルへの日本人移民史は一連の動きにより新たな色合いを帯び始めている」などと解説している。詳しくは同記事(https://amzn.asia/d/64Vjvta)を。(敬称略)