石破総理、日伯130周年強調も=物足りなさ残る具体的成果

19日の首脳会談でルーラ大統領と握手する石破総理(Foto: Ricardo Stuckert/PR)

 G20首脳会議の直前、石破茂総理大臣は17日付オ・グローボ紙に論文「日伯関係の新たな一章 – 友好と国際協力の130年」を発表した(本面カタ)。そこでは、環境協力と持続可能な開発、アマゾンにおけるグリーンパートナーシップ、気候変動に対する行動、多国間主義を重視する動きなどで日伯は連携を強化しており、最後は、来年が日伯外交関係樹立130周年であることを想起して「日伯関係の新たな幕開け」になると述べた。ただし、今回の石破総理はその外交的な振る舞いに関しては「記者の目」コラムが示すように賛否別れる部分があり、中国が37もの二国間協定に署名して関係格上げを図ろうとしたのに比べると物足りなさが残る来伯成果となったようだ。

 オ・グローボに掲載された論文で石破総理が提示した興味深い論点は次の通り。《モビリティ分野で高いレベルの低炭素技術を持つ日本と、G20で最もクリーンなエネルギーマトリックスを持つブラジルは、この分野で世界をリードするユニークな立場にある。持続可能な燃料とモビリティ・イニシアティブのもと、両国の強みを生かし、世界のカーボンニュートラルに貢献していきます》と書かれており、水素自動車などのクリーン技術を持つ日本と再生可能電力が総発電量の93%占めるブラジルの新しい提携関係の模索という方向性を示した。
 《持続可能な開発における協力は、日系移民とその子孫の絶え間ない努力なしには不可能である》として、パラー州トメアスーで日本移民が始めた森林農法を日本政府も支援していることを挙げ、《日本にとってブラジルは、世界最大の日系人コミュニティの拠点として特別な人的つながりを持つ友好国であり、来年は日伯外交関係樹立130周年を迎える。この節目の年を「日伯友好交流年」と位置づけ、文化、観光、スポーツなど様々な分野での協力を推進することで合意した》と綴る。だが具体案は聞こえてこない。
 岸田総理も5月に来伯した際、《中南米日系社会の交流の新たなプログラムを立ち上げ、今後3年間で約1千人の交流を実現することが決定した》と高らかに発表したが、半年経ってもどんなプログラムなのか具体案は公表されていない。
 今回は全般的に抽象論に終始しており、19日付大統領府広報は同日午後に40分間行われた日伯首脳会談に関し、《ルーラ大統領は19日、リオで石破茂首相を迎えた。ルーラ大統領と石破総理は、来年3月にブラジル大統領がビジネス代表団を伴って日本を訪問することを調整している。(中略)ルーラ大統領と石破総理は、ハイブリッド車や水素自動車についても話し、農業や産業における協力、ブラジル農業セクターへの融資についても話し合った》などと伝えた。
 日本側外務省広報には《両首脳は、貿易投資を含む幅広い分野で日・メルコスールの双方がウィン・ウィンとなる協力について議論する場として、日・メルコスール戦略的パートナーシップ枠組み(仮称)につき協議し、協力して取り組んでいくことに合意しました》などと主な成果が書かれている。
 対して、本紙1面にあるように中国の習近平国家主席は20日午前、首都ブラジリアの大統領官邸で、ルーラ大統領と会談し、37もの二国間協定に署名した。署名された法律は、農業、貿易、投資、インフラ、産業、エネルギー、鉱業、金融、科学技術、通信、持続可能な開発、観光、スポーツ、健康、教育、文化の分野をカバーしており、伯中関係を格上げし、グローバルサウスの結束強化を図るものだと報じられている。
 日伯は来年修好130周年、伯中は今年修好50周年。どちらの首脳が充実したG20を過ごしたのだろうか。

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