サンパウロ大学(USP)などによる「日本・ブラジル脳神経外科シンポジウム(II Simpósio Brasil Japão de Neurocirurgia Vascular 2024)」が9~10日、サンパウロ市のサンタカタリーナ病院で開催され、日本から脳神経外科医の藤本康倫、大森一美両氏が招へいされた。両氏はシンポジウム前日の8日、共催団体「PANA ACADEMY」代表の板垣勝秀氏と編集部を訪れ、日伯医学交流に対する想いを語った。
同シンポジウムは脳神経外科分野における日伯医師の手術手技の公開及び相互理解を通じて、両国の医療向上を目指すために催されている。2度目の開催となる今回はブラジルの脳外科医約190人が参加し、脳卒中手術に関する講演などを行った。
シンポジウムコーディネーターも務める板垣氏は「日本とブラジルは盛んに文化交流を行っていますが、高度な専門医療分野においてもより積極的に交流を行う必要があると考えます。藤本、大森両医師は日本の脳神経外科医療の最前線に立つ方。シンポジウムが両国医師の相互研鑽の場になれば」と語る。
藤本氏(57歳、愛媛県出身)は労働者健康安全機構大阪労災病院で脳神経外科部長を務める人物。1995~2000年にはUSP医学部脳神経外科に研修医として勤務した経験を持つ。
藤本氏は研修医時代を振り返り、「ブラジルは脳神経外科の手術件数が日本の倍以上あり、一人前の医師としての手術経験を早く積めるため、研修を志願しました。多くの手術をこなすブラジルの医師の手術技術はとても高く、多くのことを学ばせてもらいました」と語る。今回のシンポジウム参加もUSP研修医時代の先輩医師から参加を呼びかけられたからと明かし、「大阪大学にはブラジル出身の医師もおり、今後の日伯医療交流がより活発になるよう出来る限りの協力をしたいと思っています」と語った。
大森氏(54歳)は2004~06年、米国に留学し、脳神経外科分野の第一人者で「神の手」として知られる故福島孝徳氏に師事して、頭蓋底分野の手術技術を学び、これまでに3千件以上の手術を担当した。現在は兵庫県の西宮渡辺心臓・血管センターで副院長兼脳血管外科主任部長を務めている。
大森氏は今回が初めての来伯で、ブラジルとの繋がりについては、ブラジル帰りの藤本氏から世界的に著名なブラジル人脳神経外科医の故エバンドロ・ジ・オリベイラ医師の手術映像を見せてもらい、「その手際の良さ、シンプルでいて洗練された手術技術に強い感銘を受けたことを覚えています」と語る。
脳神経外科の分野では昨今、開頭をしないカテーテル手術の需要が増しており、次世代への開頭手術の技術継承が課題になっているという。大森氏は「ブラジルにはオリベイラ医師の薫陶を受けた優秀な医師が多くおり、シンポジウムで交流できることが非常に楽しみです。シンポジウムでは私の持っている知見を共有するだけでなく、日本にも優秀な若手医師が多くいることを伝え、次世代に交流の輪を繋げたいと思っています」と語った。