木下節生太鼓グループが「25周年記念コンサート」を9日夜、サンパウロ市のサンパウロ現代美術館(MASPで開催し、満員の約300人が迫力の演奏を13曲、約2時間にわたって堪能した。伝統的な和太鼓に始まり、同グループの特長であるブラジル文化と融合させたサンバ太鼓まで次々に披露され、観客を巻き込んで盛り上がりを見せた。
代表の木下節生さん(56歳、2世)は1994年にサンパウロ市で4人のミュージッシャンと「御太鼓」(ゴダイコ)というグループを結成し、翌年単独で日本に渡り、奈良県明日香村を活動拠点にする「和太鼓倭」(ヤマト)というプロの太鼓グループで3年間修行した本格派だ。1999年に帰伯し、木下節生太鼓教室を開始。現在は愛知県人会などで毎週レッスンを行い、その生徒の発表会としてこのコンサートが企画された。
開演すると、ユニゾンのリズムが会場を震わせる迫力の伝統的和太鼓で始まり、木下さんが日本で修業した長唄のお囃子(笛や太鼓)がメロディーを奏でた。さらに、北原民江先生のもとで琴や民謡の指導を受ける妻・岩本光恵さんがリードする、琴のデリケートな演奏が間に挟み込まれ、冒頭から観客には飽きの来ない演出が凝らされていた。
途中、暗転した後、突然、後ろから担ぎ桶太鼓を持った奏者が登場して、岩本さんが太鼓を叩きながら歌うサンバ風ソーラン節が奏でられはじめ、奏者らがそのまま舞台に上がって左右に体を揺らしながらヨサコイ節となった。
最後は、和太鼓とは思えない迫力のサンバ・レゲエに突入。木下さんがリードして、エスコーラ・デ・サンバのレピニッキ風のリズムに全員が呼応して、観客の手拍子も加わり、ショカーリョやアゴゴなどのサンバ楽器が加わることで、さらに心地良い独自のグルーブ感を生み出していた。
終演後、来場者のマリア・マウヴァ・モギナットさん(82歳)に感想を聞くと、「素晴らしかった。ブラジル風のリズムと日本の和太鼓が融合して美しい、見事なハーモニーを奏でていた」と感嘆した様子で述べた。
木下さんによれば、「披露した曲の前半は伝統曲、後半がオリジナル曲、最後のサンバ太鼓が日本でも賞をもらった代表曲です」と汗を拭きながら解説した。節目の25周年の現在、生徒数は35人で「この間、数えきれない数の生徒さんたちが一緒に太鼓の練習をしてきました。本当に太鼓が大好きで、太鼓が自分の人生の中でとても大事な部分を占めている人たちが多いと思います」と生徒たちを賞賛した。