久しぶりに会った長女が、筋肉の衰えを防ぎ、筋量を増やすような運動をやっているかと尋ねてきた。新型コロナのパンデミックで在宅勤務になってから外に出ることが減ったことや、主人の足元が危なくなり始めたことを知っている故の問いかけだ。今回はこの出来事と前後して見た運動に関する記事を紹介したい。
一つは11月21日付G1サイト(1)で、寝転んだり座ったりして、1日10時間以上体を動かさずにいると、定期的に運動している人であっても、心不全や心血管死のリスクが大幅に高まる可能性があるというものだ。
研究に参加した8万9530人(平均年齢62歳、56・4%は女性)は、手首に加速度計を装着して7日間、動きを観察。この人達は1日平均9・4時間を座りっぱなしで過ごしていたという。
この研究では8年後に追跡調査を行っており、4・9%が心房細動、2・1%は心不全、1・84%は心筋梗塞を起こしており、0・94%は心血管疾患で死亡していた。心不全と心血管死のリスクは座りっぱなしの状態が10・6時間を超えると大幅に増したという。
研究では、世界保健機関が推奨する中程度から激しい身体活動を週に150分実践すると心房細動や心筋梗塞のリスクは軽減するが、心不全や心血管死のリスクは排除できないことも判明した。
他方、座りっぱなしの状態をたった30分間、身体活動に置き換えるだけで大きな効果が得られることも強調。軽い活動なら心不全のリスクが6%、心血管系死亡率が9%減り、中程度から激しい活動なら心不全のリスクが15%、心血管系死亡率が10%減ったという。
運動の大切さを教えてくれたもう一つの記事は1日付G1サイトのもの(2)。「筋肉は体の薬局」という身体活動の支持者の言葉を紹介している。
これによると、筋肉は力と動きを生み出すと共に、一種の「自然薬」であるマイオカインを生成する内分泌腺としても機能するという。マイオカインは、筋肉を意味するmyoと動作やそれに関連する物質を意味するkineを組み合わせた言葉で、筋肉から分泌される生理活性物質(サイトカイン)の総称。リウマチ性疾患や自己免疫疾患のような全身性炎症の軽減や免疫機能の調節、インスリン感受性の改善、神経学的健康の改善に役立つという。
言い換えれば、筋肉の収縮は、全身の健康と心血管疾患、神経疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、糖尿病などの慢性疾患の予防に役立つということだ。マイオカインには筋肉自体に作用する物質の他、血流に乗って全身に運ばれ、様々な臓器に良い影響を与える物質も含まれているという。
マイオカインの分泌量を増やすには、スクワットなど、下半身の大きな筋肉を鍛える運動が効果的で、運動強度が高いと分泌量が増えるため、ウエイトトレーニングのように、強度の高い運動を長時間行うと高い効果が得られるという。
身体の状態は一人一人異なり、むやみに運動すればよいとは言えないが、散歩やスクワットからでも良いので少しずつ体を動かしてみてはいかがだろうか。食べ物や運動で筋量を保つことは、転倒防止や寝たきり防止にもつながることも心に留めたい。(み)
(2)https://g1.globo.com/saude/noticia/2024/12/01/musculos-farmacia-do-corpo-entenda-musculacao.ghtml