鉱山動力省傘下のエネルギー調査会社(EPE)によると、ブラジルのバイオ燃料市場は2025〜34年に約1兆レアル(約24兆7568億円)を動かす見込みだ。この金額にはエタノール、バイオディーゼル、バイオメタン、持続可能な航空燃料(SAF)などの投資と運営コストが含まれる。特にエタノールの生産が60%を占め、中でもトウモロコシ由来のエタノールや第二世代エタノールへの投資が顕著だという。バイオディーゼルも混合比率拡大により、需要が高まる予測だと、5日付グローボ・ルラル(1)が報じた。
バイオ燃料の需要拡大の背景にはブラジル政府の政策が大きく影響している。エネルギー自給率の向上と温室効果ガスの排出削減を目的とした施策が進められており、その中心にバイオ燃料が位置付けられている。
ブラジルは長年エタノール生産と利用において世界を牽引しており、その実績を基にさらなる成長を目指している。特にサトウキビ由来のエタノール生産が主力で、ブラジル経済にとって欠かせない存在だ。
サトウキビから得られるエタノールは、従来の石油由来の燃料に比べてCO2排出量が少ないため、関心を集めている。近年ではトウモロコシ由来のエタノールの生産も増加しており、これにより供給多様化と安定化が図られている。
バイオディーゼルの混合比率は25年3月から1%ポイント(PP)ずつ引き上げられ、30年には20%に達する予定で、このセクターは145億レアルの投資と775億レアルの運営コストを受け取る見込みだ。34年の生産量は835億リットルと予想されている。
船舶や海運業界でもバイオディーゼルが脱炭素化の手段として注目されており、将来的には新たな市場を開拓する可能性がある。最近、国家原油庁(ANP)は、ペトロブラスが最大24%のバイオディーゼルを混合した海洋燃料(バンカーオイル)を商業化することを特例で認可した。
SAFは航空業界の温室効果ガス排出量の削減を求められる中で、重要な要素となっている。ブラジルでは既にいくつかの企業がSAF製造を予定しており、これらのプロジェクトには総額175億レアルの投資が見込まれている。
SAFは、航空機の燃料として従来の化石燃料の代替を目指すもので、特に再生可能な資源から生産されることが求められる。ブラジルでは、パーム油、大豆油、トウモロコシ油などを原料としてSAFを生産する予定で、これらの原料供給は国内農業と密接に関連している。ペトロブラス社は29年に大豆油と牛脂を原料とする生産体制を構築する予定だ。
バイオ燃料産業における革新技術として、バイオCCS(二酸化炭素回収・貯留)が注目されている。これはバイオ燃料の生産過程で発生するCO2を捕らえ、地下に貯蔵する技術であり、温室効果ガスの排出削減に貢献する可能性がある。ブラジルでは、この技術に対する投資が進んでおり、今後のバイオ燃料産業における重要な技術として期待されている。