民間調査会社CAUSE、IDEIA、PiniOnが共同で行った全国調査で、2024年の世相を表す「今年の言葉」に「不安(ansiedade)」が選ばれた。この選定は、急速な社会変化や経済的プレッシャー、人工知能(AI)の台頭などが背景にあると、5日付CNNブラジル(1)が報じた。
同調査では「不安」が22%の支持を得て1位となり、次いで「レジリエンス(回復力、resiliência)」が21%、「人工知能(AI)」と「不確実性(incerteza)」が共に20%、そして「過激主義(extremismo)」が4%の支持を得た。
選定プロセスは2段階で行われた。まずコミュニケーションや社会科学の専門家グループが、24年の社会動向や懸念を反映する五つの言葉を選定。その後、これらの言葉を地理統計院(IBGE)の国勢調査データに基づき、全国の1538人のブラジル人を対象とした定量調査で評価した。
CAUSEの共同創設者で政治学者のレアンドロ・マシャド氏は、選定された言葉が示す背景について、「急速な変化と混乱が続く時代を反映している」と述べ、保守と革新が共に過激化して対立する世相、社会や経済、環境問題への圧力が人々に深刻な不安感をもたらしていると指摘。同氏は、国内ではAIの普及や経済の不安定さ、環境問題が影響を与えており、これらが相まって社会全体に不安感情を強めていると分析している。
IDEIAのCEO(最高経営責任者)シラ・シュルマン氏は、不安は個人の問題にとどまらず、社会全体に広がる課題であるとし、現代社会の急速な変化、SNSの影響、情報過剰が人々に精神的な圧力を与えていると強調した。
同氏は「不安は、人々がより予測可能で安全な生活を切望している兆候であることが分かる。これは、集団的圧力を緩和するための戦略が必要であることを、政府、企業、組織に対して警告するものだ」と説明した。
心理学者ラリッサ・フォンセカ氏は、現代社会の変化が不安を助長している要因として、デジタルメディアへの依存や即時的な対応を求められる環境を挙げている。同氏は、デジタルスクリーンを見て過ごす時間が増えたことが人々に不安を引き起こし、社会的な要求に迅速に応えなければならないというプレッシャーが精神的な疲弊を生んでいると説明している。
同氏の臨床経験からは、パニック障害や全般性不安障害(GAD)の症例が増加していることも報告されており、「人生のはかなさやコミュニケーションの難しさにより、他者と感情的に繋がることが難しくなっている。さらに経済的、政治的、安全保障上の見通しに関する否定的な思考が、不安な思考の過剰を引き起こしている」とコメントした。
不安の症状としては未来に対する否定的な見方や、他人の評価への過度な懸念、日常生活の中での挫折への耐性不足が挙げられる。身体的な症状としては動悸、吐き気、息切れ、胸の圧迫感などが見られることもある。これらの症状は現代社会における過剰な期待や情報の過多に起因するものと考えられる。