「私の美しい娘に贈り物をしたい。それは銀でも金でもなく、とてもささやかなものだ。そして私はファヴェーラ(貧民街)の入り口に黄色い横断幕を掲げる」―サンパウロ市東部ファベーラ地区に住む自動車整備士ジャニルトン・コレア・ダ・シルヴァさんは、私立大学の医学課程を修了した娘ナタリアさん(24歳)を称え、この言葉を記した特製の黄色い横断幕を、自身が営む工場の外壁に掲げた。
ナタリアさんは貧しいながらも、両親の深い愛情と支えを受け、多くの困難を乗り越えながら夢を実現した。私立大学医学部の学費は非常に高く、中産階級でも払うのは難しい。彼女は、両親の誇りこそが自分の生きがいだと語っている。9日付G1(1)が報じた。
この横断幕は〝サンバ界の詩人〟大物歌手ゼッカ・パゴジーニョの楽曲『ファイシャ・アマレーラ(黄色いリボン)』の歌詞にインスピレーションを受けたもの。シルヴァ家では皆が愛しているカリスマ歌手だ。
横断幕には白衣を着たナタリアさんの写真とともに「娘よ、成果を祝う。ナタリア医師、ファヴェーラが勝利した!」という言葉が添えられていた。
ナタリアさんは父親の敬意に深く感動し、SNSに次のようなキャプション付きで動画を投稿した。「この祝いや感動の裏にたくさんの努力と汗があることを知っています。お父さん、あなたにこんなに誇りを感じてもらえるなんて、私は本当に幸せな娘です。私のためにしてくれた全てに感謝しています。最高の整備士の娘であることを心から誇りに思っています。お父さんのために私は医者になります! これが私にとって、最高の感謝の気持ちを表す方法。永遠に愛し、尊敬しています!」
この動画はたちまち話題となり、9日朝までに150万回以上再生されていた。
ナタリアさんはG1の取材に対し、「父は私の卒業式の週にこの横断幕を掲げてくれました。高価な贈り物はできないけれど、お祝いの方法を一生懸命考えてくれたんです。私たち一家が愛するサンバの楽曲に込められた父の想いは特別で、意義深いものです」と話した。
ナタリアさんは医学部を卒業するまでの道のりについても触れ、「両親が私の人生の基盤です。父は整備士として、母は看護師として医療現場で働く姿が、私のインスピレーションです。医者になる夢が現実的とは思えない時もありましたが、両親は私を全面的に支えてくれました。パンデミックのとき、父は仕事ができず、母が最前線で働き、車などを売って学費を工面してくれました。彼らがどれほど努力したか、私はよく分かっています」と語った。
この横断幕は地域でも話題となり、多くの人が工場を訪れて祝福したという。「父の工場は角地にあって多くの人の目に留まりました。地域全体がこの出来事を話題にし、多くの人が訪れてくれました。本当に素晴らしい経験でした」と話した。
彼女は将来について、「今後は一般医として働きますが、将来は麻酔科医を目指しています。両親が私を誇りに思ってくれる姿を見ることほど嬉しいことはありません。この感動には何にも代えられない価値があります」と語った。
山田洋次監督作品である映画『幸福の黄色いハンカチ』の原作は、コラムニスト、ピート・ハミルが1971年にニューヨーク・ポスト紙に掲載したコラム『Going Home』)だった。そこからの流れを感じさせる物語だ。