下院は12日、未成年者に対する性的犯罪で有罪判決を受けた者に、化学的去勢を行うことを定めた法案を承認したと同日付G1(1)が報じた。今後、上院での審議に回される。
化学的去勢は、投薬によりテストステロンなどの性ホルモンの分泌を抑え、性的衝動を断つことを目的としており、懲役や拘禁刑と併せて適用される。臓器の除去手術を伴わない、可逆的な処置とされ、懲役や拘禁刑と併用されることが多いが、その適用条件や方法は国や地域によって異なる。
この法案では、未成年者への性的犯罪者を対象としており、具体的には未成年者との性交渉の録画や販売、性的行為の強要、強姦、児童売春などが含まれる。これらの犯罪で有罪判決を受けた者には、懲役刑や拘禁刑に加え化学的去勢が課されることが規定されている。
当初、未成年者への性的犯罪者の情報を登録する「小児性愛者登録簿」の創設を目的としていたが、反対派議員の提案で化学的去勢の規定が加わり、議論が過熱した。最終的に法案は賛成267票、反対85票で下院を通過した。政府は反対の立場を取っていたが、下院では少数派にとどまった。
賛成派は化学的去勢を再犯防止の有効な手段とみなし、特に性的犯罪の再犯リスクを減らす効果を強調している。一方、反対派は強制的な適用が人権侵害に当たる可能性や、十分な科学的根拠の欠如を指摘している。
上院では過去に同様の提案が承認されたものの、保健委員会での審議が進まず、現在も停滞している。上院案では再犯者にも選択制で適用される可能性があると規定されている。
法案の最終的な成立は上院での審議次第だが、化学的去勢の効果や倫理的問題を巡る議論は続く見通しだ。
なお、インドネシア、ロシア、ポーランド、韓国、米国の一部州などでは、暴力的な性犯罪者に対する刑罰、または予防措置として化学的去勢がすでに行われており、刑期の短縮と引き換えに自発的に提供されることが一般的である。ただし、日本では化学的去勢は承認されていない。