話題が豊富な2024年=コロニア10大ニュース=連邦政府謝罪や現役首相2人来伯

 今年も本紙編集部が独断と偏見で、2024年のコロニア10大ニュースを選んだ。1位の大戦に関わる日本移民迫害への連邦政府謝罪は日伯で大ニュースとなった出来事だった。また10年ぶりの現役首相来伯、石川地震やリオ・グランデ・ド・スル州水害と支援、コロニアからノーベル平和賞受賞式出席など、「大きな出来事が起こる」と言われる辰年らしい話題が豊富な1年だった。来年は巳年で、脱皮する蛇の年であることから「成長」や「変革」が期待されている。

原告団の沖縄県人会の宮城さんらの方に向かって謝罪の言葉を述べるアルメイダ委員長

【1位】連邦政府が日本移民迫害を謝罪=日伯メディアが大々的に報道

ブラジリアの人権市民権省の恩赦委員会(エネア・アルメイダ委員長)は7月25日、戦中戦後の日本移民コミュニティー迫害に対する政府謝罪の審議を行い、評議員全員が賛成し、同委員長が謝罪した。その様子は当日から日伯両国の新聞や雑誌、テレビで大々的に報道され、林芳正官房長官も26日の記者会見で「日系団体などの申し立て人側にとって満足のいく結果だったと理解している」とコメントするなど大きな反響を呼んでいる。
 謝罪請求をしたブラジル沖縄県人会(高良律正会長)と奥原マリオ純さんが5月21日、謝罪審議が7月に行われるという説明会を、日本メディア特派員向けに行った際も、日本側で大々的に報道が行われた。中でも読売新聞は5月23日付朝刊面トップ記事で《ブラジル 日系人収容 7月審議 人権侵害 謝罪意向》と大々的に報じ、謝罪決定の際も7月26日付夕刊1面トップで報じた。朝日新聞も3回連載《迫害された日系移民 ブラジルで何が起きたか》を掲載した。
 TBS「NEWS DIG」は速報に加え、後日改めてインタビュー特集《サントス強制退去事件の証言者たち》(https://www.youtube.com/watch?v=oAtQCk8vW9E)を制作、ポ語字幕入りでネット公開した。沖縄テレビ放送(OTV)も独自の特集『第二次大戦 日系人迫害 サントス事件 81年目の謝罪』(松林要樹ディレクター、https://youtu.be/KpDUwnKF0lU?feature=shared)を放送した。
 ジャーナリストの三山喬さんは月刊誌『世界』12月号(岩波書店)で、日本移民迫害への謝罪に関する記事「ブラジル移民史の新章 謝罪請求運動、ふたつの水流」を発表した。

文協正面玄関でお出迎えをする日系5団体代表、岸田総理と握手するブラジル日本商工会議所の小寺会頭

【2位】「故郷に帰ってきたよう」=岸田総理来伯、歓迎式典に1千人

 岸田文雄内閣総理大臣(当時)が5月3~4日、今年11月にリオで開催されたG20の事前協議などのためブラジルを訪れた。日本の現役総理大臣がブラジルを訪れるのは、2014年の安倍晋三氏以来のことだった。
 岸田総理は3日にブラジリアでルーラ大統領と会談。メルコスールとの経済関係強化や、日伯外交関係樹立130周年となる2025年を「日伯友好交流年」と位置づけ、交流の促進を確認した。
 4日にはサンパウロ市を訪れ、イビラプエラ公園内の開拓先没者慰霊碑に献花し、同公園内日本館やサンパウロ市中心部にある日本文化広報施設「ジャパンハウス」を視察。サンパウロ大学法学部で政策講演を行い、日伯の経済団体による「日・ブラジル・ビジネスフォーラム」に出席した。
 ブラジル日本文化福祉協会ビルで行われた日系団体による歓迎式典には約1千人以上が来場。岸田総理は「まるで故郷に帰ってきたような懐かしい感じがします」と歓迎に対する感謝を述べ、今後の日系社会との関係深化について講演した。

【3位】自然災害、国境超え支え合う=能登半島地震、リオ・グランデ・ド・スル州大水害

 今年は日伯両国ともに甚大な被害をもたらす自然災害が発生した。日本では1月1日に能登半島地震が発生。ブラジルでは4月末からの豪雨によりリオ・グランデ・ド・スル州で大規模な水害が起きた。これらの被害に対し日系社会は連携して募金などの救援活動を行った。
 能登半島地震に対しては石川県人会が寄付口座を開設し、チャリティーイベントを開催。個人やブラジル健康体操協会などの団体から受け取った寄付金を母県へと贈った。石川県人会の武部清美エリーナ会長は当時、「ブラジルからの応援の気持ちが日本に届けば」と語っている。
 リオ・グランデ・ド・スル州大水害では、被害地域のポルトアレグレ市で活動を行う日系福祉団体「南日伯援護協会」の施設が壊滅的な被害を受けた。その他同地域では多くの被害が発生し、日本政府は浄水器75個の緊急援助を決定、日系社会ではブラジル日本文化福祉協会ほか日系6団体が支援物資寄付キャンペーン「SOS SUL」を組織し、同地の復興活動を支援するなどした。

授賞式の後、在ノルウェーブラジル大使館のロドリゴ・デ・アゼレード・サントス大使と、二人の遺影を手に持って記念撮影する渡辺淳子さん(「核兵器をなくす日本キャンペーン」インスタグラム)

【4位】ノーベル平和賞受賞式に出席=被爆者の会の渡辺淳子さん

 ブラジルではノーベル賞受賞者は一人もいない。だが今年、12月10日にノルウェー首都オスロで開催されたノーベル平和賞受賞式には、在ブラジル原爆被爆者の会理事の渡辺淳子さん(81歳、広島県)も出席した。渡辺さんは式典中、今年8月に惜しくも亡くなった森田隆さんや「原爆の子の像」モデル・佐々木禎子さんの遺影を手に掲げていた。森田さんは、ブラジル被爆者平和協会を1984年に設立して会長として長年、核兵器廃絶を訴え続けてきたが、8月12日に行年100歳で老衰のために亡くなっていた。
 渡辺さんは「私はブラジルの団体を代表してとかじゃなくて、被団協の団員の一人、被爆者の一人として出席しています。被団協と同じことを、私たちはブラジルでやってきました。核兵器のない世界を実現する運動をさらに進めなければという意を新たにしました」と出席した感想をしみじみ述べた。

【5位】「日本であなたに逮捕状」=大使館装う日本語詐欺電話相次ぐ

 11月、在サンパウロ総領事館などが日本大使館職員を騙る日本語詐欺電話への注意喚起を行った。当地での詐欺電話はポルトガル語でのものが中心で、日本語によるものは珍しい。詐欺電話の内容は「日本であなたに逮捕状が出ている。解決の為にお金が必要」といったもの。日本各地で頻発している特殊詐欺の矛先が在外邦人にも向けられてきたとの見方や、詐欺犯は如何にして日本語話者の連絡先を入手したのか、高齢の親族が騙されないかなど多くの不安が日系社会を揺らした。

【6位】歴史に新たな1ページ=日系団体の周年行事祝い

 今年はブラジル岩手県人会が創立65周年、ブラジル北海道文化福祉協会が85周年、ブラジル宮崎県人会が75周年、在伯青森県人会が70周年、ブラジル長野県人会が65周年、ブラジル和歌山県人会が70周年、ブラジル福井県文化協会が70周年を迎えた。各県人会は母県から知事を始めとする慶祝団を迎え、盛大に節目を祝った。
 また、サンパウロ市と大阪市の姉妹都市提携55周年を記念する行事や、サンパウロ日伯援護協会の高齢者施設「サントス厚生ホーム」創立50周年記念式典、ブラジルモラロジー研究協会創立60周年記念式典なども催され、ブラジル外ではボリビアでコロニア・オキナワ入植70周年記念祭典が行われるなどした。

11月19日の首脳会談でルーラ大統領と握手する石破総理(Foto: Ricardo Stuckert/PR)

【7位】「日本政府は皆さんを後押し」=G20で石破総理ら来伯

 11月にリオで開催されたG20に出席するため、石破茂総理大臣がブラジルを訪れた。石破総理はG20で国際的な課題について参加国首脳らと協議。ルーラ大統領とも首脳会談を行い、日伯外交樹立130周年に向けて、経済分野をはじめとする二国間関係の国際場裡での協力の強化を行うことで一致した。リオの現地日系人及び在留法人との懇談会では「日本政府としてこれからも皆さんの活動を後押ししていきたいと思います」と日系社会への協力姿勢を示した。また、坂本哲志農林水産大臣や石川昭政デジタル副大臣兼内閣府副大臣もG20関連会議のためにブラジルを訪れ、日系団体と交流を行った。

序幕した記念碑の前に立つ弓場的会長、西尾ロベルト氏、同公園土地寄付者の子孫、輪湖氏の子孫、永田翼氏、関副知事(左から)

【8位】1世紀の節目迎えたアリアンサ=入植100周年記念石碑を除幕

 第1アリアンサ文化体育協会(弓場的(ひょう)会長)は11月20日に北原地価造広場で入植100周年記念石碑の除幕式を行い、続いて同会館で入植100周年式典を開催した。縁の深い長野県から関昇一郎長野県副知事、山岸喜昭県議会議長、羽田健一郎長野県町村会会長ら8人の慶祝訪伯団が出席した。
 同地は1924年5月、信濃海外協会が選定した土地を10月に日本から派遣された永田稠が購入契約をし、北原地価造夫妻(長野県出身)が1月20日から開拓小屋を築いて露営を始めた。その日が入植記念日となっている。
 それに先立つ9月7日晩には「入植100周年盆踊り」が同地総合グラウンドで開催され、同地区人口を大きく超える4千人が参加して盛大に祝い踊っていた。11月20当日は同地の北原地価造広場で百周年記念石碑の除幕式、その後は同会館で式典および敬老会が行われた。

【9位】ブラジルは最多で270万人=日本外務省が公式日系人推計発表

 外務省領事局政策課が4月、全世界の海外日系人数推計(2023年10月1日現在)を発表した。世界の日系人人口は総計約500万人で、国別ではブラジルの270万人が1位となった。
 なお、ブラジル地理統計院(IBGE)が昨年発表した国勢調査の日系人数は約85万人。この差について在ブラジル日本大使館は、IBGEの統計は「日系人と自己認識している人の数」で、日本外務省推計は「日本人の血統を引くものの総計」の違いによるものとしている。

【10位】アフリトス街のスズラン灯撤去=黒人文化団体の要請受けて

 サンパウロ市リベルダーデ区エステダンテ街を下っていくと右側にある袋小路「アフリトス街(Rua dos Aflitos)」のスズラン灯が11月18日に撤去された。同20日が黒人意識の日であり、それに先立って行われた。
 これは9月4日にブラジル日本文化福祉協会小講堂で発表された「エスプラナーダ・リベルダーデ」実施計画の中でも予告されていた。同計画はサンパウロ市市役所による地区再開発都市プロジェクトで、ラジアル・レステ高速道路上のリベルダーデ大通りの高架橋から大阪橋、三重県橋、上塚周平橋に蓋をして観光名所を作るもの。プロジェクトの総投資額は約3億3300万レアルを想定。
 スズラン灯撤去は、この再開発計画とは別に、UNAMCA(União dos Amigos Capela dos Aflitos)という黒人文化保護団体が6年前から申し立て申請をしていた。同街の奥に位置するアフリトス礼拝堂再建を目標とする黒人文化団体(@aflitos.unimca)だ。

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